インタビュー:今成講師と斎藤講師
2015年秋、いよいよ各企業において内定式や内定者向け研修など活性化する時期となってまいりました。2015年春の新入社員教育施策の振り返りやフォロー研修も並行して行われる中、時代に合わせた新入社員に対する教育ニーズも高まってきています。 フランクリン・コヴィーの新入社員研修「ディスカバリー」はリニューアルして2年目を迎え、大手製造業、医療・化粧品といった各種メーカー、建築・不動産業、金融・保険業等多岐にわたる業界の企業様においてご活用をいただいております。開発・講師を担当した今成講師、斎藤講師に2015年度の振り返りと、これからの新入社員教育についてインタビューを行いました。
―「新入社員研修「ディスカバリー」が2年目を迎えました。お二人には新入社員研修を担当いただいていますが、リリースされた1年目と比べ、この2015年度の新入社員の傾向や研修全般について何か変化はありましたか」
斎藤:近年の売り手市場の中、採用が甘くなってきているというニュースをよく耳にしますよね。それがすべて影響しているとは言えませんが、5年前、10年前と比較すると、新入社員の傾向は明らかに変化がありますね。買い手市場だった頃と比較して、あの切迫した危機感は薄れてきていると言えると思います。
今成:確かにそういった傾向がありますね。新入社員研修においても、以前の新入社員にありがちな緊張感ではなく、リラックスし、楽しんでいるといった様子が見受けられます。少しネガティブな言い方をすれば、研修ではなくイベントを楽しむ遊び感覚で、「ゆるい」態度が見受けられます。よく言えばおおらかと言えるでしょう。 実際に人事担当者の方とも最近の新入社員の傾向について話をすることもあります。たとえば、研修においても現場においても、まじめに取り組むといったポジティブな姿勢が見受けられます。指摘されれば、改善しながらまじめに取り組むのですが、一方でそれを他に応用するという応用力が足りない、といったようなマイナス面の傾向も見受けられるというお話を人事担当者の方からうかがいましたね。また、ハードルの高いこと、たとえば自ら考えて行動するようなことを言われると「それは教わっていません」と素直に返すといった、最初から答えを探し、受け身的な傾向があるようです。
斎藤:100個言われれば100個なおす。でも101個目はやらない。こういったことでしょうか。今は恵まれた時代です。インターネットで検索すれば簡単に答えにたどり着くことができます。もちろん、そういったテクノロジーを使いこなす能力に秀でていたり、学生のテストのように最初から分かっている答えに短時間でたどり着くこともひとつの能力です。 しかし、実際の仕事は簡単に答えが出ることばかりではなく、むしろ複雑に絡み合った問題の解決や大きな成果を出し続けるために、主体性やコミュニケーション、チームワークが欠かせません。もし今、人事担当者の方や我々が感じているこの「傾向」のまま、新入社員が育っていったとしたら、即戦力を求める組織としては悩ましい問題です。
―「2015年春の新入社員研修に参加した新入社員の傾向をより具体的に教えていただけますか」
斎藤:新入社員研修「ディスカバリー」は、学生から組織人に参加者自らがマインドセットすることで、その後に続く研修への効果やOJT、配属後の成長を効果的にしていくことを目的としています。したがって、「ディスカバリー」はマナー研修やスキル研修の前に、最初に実施されることが多い研修です。それゆえにその「傾向」によく気づきます。 たとえば研修の中では主体性やチームワーク、目的・意義、プロ意識といったマインドを醸成するために様々なワークや映像教材を使用しています。その中でアポロ11号を題材とした映像教材がありますが、彼らからアポロ11号の周辺知識、たとえばアメリカの宇宙開発計画の話などたくさん出てきても、肝心の学び、つまり自分事に落として深く思考するといったことがなかなかできない、といったことがあります。
今成:「知っている」を「している」とすることへの切り替えが出来ていないのですね。教えてもらうことが前提としていると、いきなり自ら深く思考し、実践して結果を出すということは一般的には一長一短にできることではありません。 実際の研修でも、最初はネガティブだったり、うまくできない参加者もいますが、繰り返しフレームワークに立ち返り、多くの演習や映像教材を使って、自ら思考する練習を行うため、研修中に少しずつできてくるようになります。大切なことは、研修の中ですべてがうまくできなかったとしても、どうしたら組織人として成長し、望む成果を出せるようになるのかという視点を持つことと、現場においてフレームワークを使って考え、行動を選択するマインドを自らがセットすることですね。もちろん実際の現場では、うまくフレームワークを使えなかったり、行動の選択を誤って失敗したりすることもあるでしょうが、そのギャップに気づき、修正していくことが組織人としての成長につながります。
―「「ディスカバリー」は最初に実施されることが多い研修とおっしゃっいましたが、その理由を教えてください」
今成:実際に導入された企業のご担当者の方からよくうかがうのは、入社式の翌日にまず、「ディスカバリー」を実施したところ、その後に続く各種業務研修に大きな影響が出たということです。最初に学生から組織人へのマインドセットをすることにより、研修への参加姿勢が変わってくる。自分から何か掴み取ろうとする姿勢や、目的意識を持って参加している様子が如実に現れたそうです。それから「ディスカバリー」では「不本意な配属先に配属されてしまった」といったように新入社員が今後遭遇するかもしれないケースなどの様々な刺激を取り扱いますので、実際に現場に配属されてから効いてくるような演習が用意されています。他にも「すごく厳しい先輩がいて萎縮してしまう」であるとか、「自分の実力以上の仕事を任せられてしまって辛い」といったように様々な刺激があらゆる方向からやってきたときに、どういったフレームワークを有効に使って思考し、行動するのか、といったことを学びます。
斎藤:これから起こりそうなことを想像して、パラダイム、つまりものの見方が他に沢山あることを一時停止して自分事にして考える。目的・意義を明確にするから、その後の他のカリキュラムにいい影響を与えるということですね。研修で寝ている新入社員がいる、などよく聞く話ですが、これもただ会社の説明はや部門の説明を聞かされる退屈な時間だと決めつけたり、その目的や意義を考えずに参加していることが原因だったりします。 また、学生時代に学園祭や学校の行事で協力してやるのと、仕事の中で協力して何かやるのは何が違うのか、といったように、具体的にイメージさせると彼らもわかるのですが、たとえば「学生気分から社会人の意識を持たせるために、若者の根性を叩き直してやる」といったことで、枝葉の部分だけを取り上げるのはあまり意味がないことですね。新入社員自身が研修を通して仕事に対する目的意義を見つけるのもすごく大事なのですが、実は人事担当者の方々も目的意義を込めて、研修を選択し、また最適な時期を決める必要があります。実際、人事のご担当の方と研修導入についてお話をすることがありますが、「ディスカバリー」をスケジュールのどこに入れたらより効果的かといったことをすごく考えていらっしゃる。そういったご担当の方の中には、自社の研修体系を設計される中で、逆に新入社員研修の最後に「ディスカバリー」を入れるということもありました。今までやってきたことにどんな意味があっただろう、自分たちは何を学ぶべきだったのか、そういったことを改めて考えてみようという振り返りを目的としたフォローですね。
―「新入社員の早期戦力化や早期退職を防止するためにフォローアップ研修を実施するのは、今や一般的となっていますね。春の研修の後、フォローアップを導入されている企業も多いかと思いますが、効果的なフォローアップの方法はあるのでしょうか」
斎藤:先ほどお話しした導入企業様では4月の新入社員研修の最後に入れられています。ただし、「ディスカバリー」のコンテンツの半分だけです。そしてまた約半年後に残りの半分を実施する。導入される企業様の人材育成計画によるところもあるかと思いますが、後半はチームワークとか人間関係にかかわるコンテンツが多いことから、あえて現場で痛い目にあったり悩んだりした経験を、振り返りと併せて半年後の残りの半分のコンテンツへ紐づけることで、学びや気づきの発見に現実味が増してくる、というものです。 また、一通り4月のはじめての研修として「ディスカバリー」を実施をした後に、その企業様の実情に合わせてカスタマイズしたフォロープログラムを実施するという手もあります。これは一度学んだことの振り返りになるので、改めてのリマインドとなります。春に学んだことを大なり小なり実践してきたわけだけれども、実際に自分の「磨き方」はそれで良かったのだろうかといったように、周りの人から色々期待される中でその期待に応えられているのだろうか、といったような振り返りですね。半年経験して初めて見えることもありますよね。改めて自分はどういう「磨き方」が必要なのかということと、もともとなぜこの会社を選び、どんな姿勢で仕事をしたいと考えていたのか、そして期待をかけてくれている周囲の人の役に立てたことを振り返ったり、その先に更に周囲の人や組織に対する貢献だったり、やり遂げたい、成し遂げたいことが新たに何か見つかったかといった棚卸です。
今成:他にも、あえて4月には実施せずに、入社半年後に新入社員フォローとして「ディスカバリー」を実施されている企業もあると聞いています。これは新入社員が現場での経験を通して苦悩をど「ディスカバリー」のフレームで吐き出させてパラダイムを変えるきっかけにしてもらったり、小さな成功体験の確認をするといったことですね。「ディスカバリー」は社内ファシリテーターのライセンスを取っていただくことで、内製化展開できるプログラムです。新入社員研修のプログラムというと4月に実施するものというイメージが強いかもしれませんが、フォローも含めて考えると、実は通年活用できるプログラムなんですよね。
斎藤:新入社員が「ディスカバリー」に参加して、組織人をめざして実践を積み重ね、フォローアップをすることでより効果的な結果を出せる組織人に近づいていきますよね。そして若手社員として活躍し始めるころに、OJTリーダーになったりする。その時に共通言語として「ディスカバリー」を知っていれば、新入社員の模範となりますし、言動に説得力が出ます。
今成:自分は新入社員として自分を磨くときに重要なポイントをフレームワークとして持っているから、新人の立場で考えた時にOJTリーダーとしてプラスアルファのサポートができるということですね。特に内製化は、後輩の新入社員の早期戦力化を効果的に展開していく際に、共通言語を持っている2年目、3年目の先輩社員がサポートする、といった効果的な育成の仕組みを創り出すこともできるかもしれませんね。
斎藤:新入社員の育成は、組織にとっても、新入社員たちにとっても、よりよい成果を出して、いきいきと仕事ができるための最初の種まきですよね。OJTも実は悩ましいところがあって、OJTリーダーになる人、メンターなる人を育成したいけれどもなかなか予算が取れなくて…といったことは結構あるのです。しかし、内製化して新入社員と2年目社員の育成サイクルをつくることで予算もその中に丸められるかもしれないですし、何よりOJTリーダーを立てる真の目的は新入社員を教える側のOJTリーダーが頭を整理すること、つまり自分が「学ぶために教える」ことになっている訳ですよ。OJTリーダーの役割を担うことが、見方を変えるとひとつの振り返りの時間になるという考え方もできます。
―「最後に、新入社員が組織人として成長して、結果を出せるようになるために、どのような研修体系やフォローが効果的と考えられますか」
斎藤:これは新入社員に限らず言えることですが、大事なのは個人が成長し、結果を出し続けるカルチャー(組織文化)ですよね。カルチャーは意図して作られるものですから、成長し続ける企業カルチャーへの第一歩とは、会社の目指しているものを大切にしたり、それ以前に組織で働くひとりの人として周りの人と円滑に仕事をしたり、効果的な行動の習慣化をすることです。 新入社員に求められる習慣はまずは思考パターンの習慣です。行動の習慣化は、朝会ったら「おはようございます」とあいさつしましょう、何分前に出社して机を拭いておきましょうといったように一種の型のようなことです。 しかし、ただ意味もなく型をこなしていたとしたらどうでしょう。望んでいるのは行動の前にその行動の目的や意図を考えることです。つまり、フレームワークによる思考の習慣化なんですよね。どういう風に考えたら、どういうプロセスを踏まえたら結果につながるのかというところですよね。
今成:そうですね。結局何故、それが有効かというと、応用が利くということなのですよね。ビジネスの場においては全てに利害関係者からの期待があって、その期待にどう答えるかというところが前提です。最初の近年の新入社員の傾向の話の際に「応用が利かない」という問題がありましたが、ひとつひとつやり方を教えたり、指示するのではなく、新入社員が自分で考え、思考と行動の習慣を身に着け、自ら答えを探して結果を出すプロフェッショナルに成長していくということ、そこを目指したいですね。
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