ダイバーシティ(多様性)を推進することによって、企業にはさまざまなメリットがある。
まず、性別、年齢、人種、国籍、宗教、障害の有無、学歴などの違いに制限を設けないことで、人材の採用枠を現状よりも広く設定することができる。
それにともなって、就業形態を多様化させ、時短勤務、在宅ワーク、フレックス制、残業時間の縮小などを進めることで、プロジェクトや業務に対して最適な人材を確保することが可能になる。
具体的にはたとえば、「今は週に3日、時短勤務でしか働けないが、過去の実績からプロジェクトに必要なスキルを持っている」という人材の雇用などだ。
また、多様な人材に視点を広げることで、海外経験のある人や外国語が堪能な人、多様な文化的背景をもつ人など、グローバル社会に対応できる人材がより候補者に入ってくる。
ダイバーシティを推進している企業は、そういった人たちにとっても働きやすい会社であるに違いない。
これまでにないアイデアや知見を共有してもらうことで、プロジェクトや事業全体が底上げされることになる。
そんなメリットを理解していても、実際に目の前に自分と違った価値観を持つ人がいると、なかなか受け入れられないという人もいるだろう。
似た環境で育った日本人同士であっても、意見の対立があったり理解できない文化背景を持っていたりすることはある。
そんな我々に向けて、スティーブン・R・コヴィー博士は、異なる価値観を持つ者同士で「シナジー」を作り出すことの重要性を述べている。
そして、シナジーを生み出すための考え方(パラダイム)についても教えてくれている。
違いを尊重することがシナジーの本質である。人間は一人ひとり、知的、感情的、心理的にも違っている。そして違いを尊重できるようになるためには、誰もが世の中をあるがままに見ているのではなく、「自分のあるがまま」を見ているのだということに気づかなくてはならない。
もし私が世の中をあるがままに見ていると思い込んでいたら、自分との違いを尊重しようと思うだろうか。「間違っている人」の話など聴くだけ無駄だと切り捨ててしまうだろう。「私は客観的だ、世の中をあるがままに見ている」というのが私のパラダイムなのだ。「他の人間は些末なことにとらわれているけれども、私はもっと広い視野で世の中を見渡している。私は立派な視野を持っている。だから私は上に立つ者としてふさわしい人間なのだ」と自負しているのである。
(スティーブン・R・コヴィー『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』キングベアー出版)
異なる文化背景や意見を持つ人を目の前にしたとき、拒否反応や思考停止に陥ってしまうのは、自分が無意識のうちに「自分こそが間違っていない、正しいはずなのに」と考えてしまっているからだ。
同じ考えを持つ者同士が一緒にいれば、意思疎通も簡単でやりやすい面は確かにあるだろう。しかし、それはプロジェクトや事業の成長をもたらすものではない。
もし、自分と異なる意見や文化背景に面食らってしまったならば、コヴィー博士のこの言葉を思い出したい。
二人の人間の意見がまったく同じなら、一人は不要である。
(スティーブン・R・コヴィー『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』キングベアー出版)
多様性を受け入れるということは、自分と違う相手を「必要だ」と思えるようになるということだ。
チームや企業の中で真にダイバーシティの土壌を作り出し、メリットを享受して成長していくため、『完訳 7つの習慣』や研修をとおして、ぜひ「シナジー」を生み出す方法を学んでいただきたい。