自分も日々の業務に忙殺されているとき、主体性の乏しい部下を見て、ついこんな考えが頭をよぎった。
「部下に任せず、自分がやれば明日には終わるだろう」
「部下はどうせ失敗する。尻拭いの対策を考えておこう」
「自分が考えた内容で、資料化する作業だけお願いしよう」
こんな考えが良くないことは、もちろんわかっている。だから、頭の中ですぐに打ち消す。
なぜこの考えが良くないか、明確に回答できるだろうか。
部下の主体性が育たないことはもちろん、上司と部下の間に信頼関係がなく、スムーズに進むべき仕事が滞ってしまうからだ。
不信はビジネスを行うコストを倍増させる。
───ジョン・ホイットニー(コロンビア・ビジネススクール教授)(スティーブン・M・R・コヴィー『スピード・オブ・トラスト』キングベアー出版)
自分を信じてくれないとわかっている人のために、良い仕事をしようと思える人は少ないだろう。
最初の頃は、上司を信頼して主体的に働きたいと思っていたとしても「君を信じていない」という上司からのメッセージを感じ続けていれば、その気持ちは削がれていく。
部下に自分を信頼してもらい、安心して仕事に励んでもらうためには、どんなことをすれば良いか。
まずは、自分を信じることだ。実は、自分を信頼していない人はとても多い。
リサーチによると、自分で建てた目標に最後まで取り組まず、自分との約束を守っていない人は大勢いるようだ。例えば、アメリカ人のほぼ半数が信念に何らかの決意をするが、それを実行するのは八%にすぎないという。
こんなことを何度も繰り返していると、どうなるだろう。自分との約束を守らないでいると、どんなツケが回ってくるのか。自信が切り刻まれてしまうのである。約束しても守れない自分を信頼できず、それがひいては人格の弱さとなって現れ、周囲の人々から信頼されなくなる。(スティーブン・M・R・コヴィー『スピード・オブ・トラスト』キングベアー出版)
上司が自身を信頼し、まわりから信頼され、そして部下を信頼すること。
それによって、部下は信頼できる上司のもとでのびのびと主体性を持って仕事をしていくことができる。
まずは、自分との約束を守ること、そして、部下を信じて仕事を任せ「君を信頼している」と伝えることからはじめてみてはどうだろう。
お互いに信頼し合う環境を作り上げることで、部下の主体性以外にも、仕事のスピードや生産性、コストに良い影響を与えることができる。
詳しくは、ぜひ本書や研修で体感してみていただきたい。