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「どうして自分が?」人事異動のプレッシャーに打ち勝つ方法

「どうして自分が? と思いました」

これは、ある地方銀行員が人事異動で転勤を言い渡されたときの最初の感想だ。

「どうして自分が?」というのは、なにも不満を言っているのではない。
異動先で、いったい自分は何をすればいいのだろう? 何を期待されているのだろう? という、期待と不安の感情だ。

 

勤続3年目だからそろそろ。プロジェクトが一段落したから。経験を積ませて、リーダーになってほしいから。
異動が決まった理由はさまざまあるはずだが、それをはっきりと伝える文化を持つ会社や上司はそこまで多くない。通例という雰囲気もあるだろうし、異動は組織人の宿命でもあるからだ。

新しい環境で、自分は何を期待されているのか。何をすればいいのか。
それがはっきりわからないことで、変なプレッシャーを感じてしまったりモチベーションが上がり切らなかったりする人もいるだろう。

 

フランクリン・コヴィー社の知的生産性プログラム担当グローバル・リーダーであるコリー・コーゴンは、どんな環境であれ「自分の役割」を特定することが重要だと説いている。
「自分の役割」というのは会社の中での役職、肩書ではない。

人間の脳は情報を役割などのカテゴリー別に整理して蓄えるため、役割によって生活を分類・整理してみるのは大いに意味がある。

(コリー・コーゴン『5つの選択 卓越した生産性を実現する』キングベアー出版)

自分の役割を明確にし、さらにどの程度それを果たしているか、さらには卓越した役割として果たすために何ができるかを考える。セルフチェックはもちろん、家族や同僚など、他者の意見を聞くことも大切だ。
そうすることで、自分が及ぼす影響や、自分を向上させることの必要性や願望を理解することに役立つ。

 

これは異動のときも同じことだ。
突然の辞令に驚いてしまうこともある。それでも、まずは落ち着いて自分が異動する意味と、そこで自分が担っていく役割について考えてみてほしい。

貢献したい、達成感を味わいたいという気持ちは、人間としての自然な欲求である。あなたは成功というものの姿をどのように思い描くだろうか。あなたの理性と感情の両方を駆り立てるものは何だろうか。ある役割における目的をより深く考えるにつれ、感情がこみ上げ、これまでにない気づきを得て、役割の重要性を理解することになる。

(コリー・コーゴン『5つの選択 卓越した生産性を実現する』キングベアー出版)

 

上司や人事に、異動の理由を深く聞いてみることも良いかもしれない。
しかし、その前に、環境や条件によらず、自分が仕事の中で何を成したいのか、何を得たいのか改めて考えてみることも必要だ。

『5つの選択』の日本語版開発を手掛け、担当ファシリテーターも務める佐藤亙氏は、インタビューでこのように述べている。

自分の責任で、物事をどう捉えて、どう選択するのかということが実はパフォーマンスを決める大きな要因になっています。不景気やお客様の数など、諸々の条件が悪いから売上が上がらないんだというふうに決めつけたがりますが、それよりももっと自分自身の考えをどう「選択」しているかを見直しましょうというメッセージを出しています。

(フランクリン・コヴィー・ジャパン株式会社「卓越した生産性を目指す研修プログラム「5つの選択」講師インタビュー」より)

 

「どうして自分が?」の答えを自分自身の中から見つけ出すことで、プレッシャーによる不安が武者震いとなり、新しい環境に飛び込む勇気と意欲に変わるに違いない。

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