大学生にコミュニケーションが上手な人とはどのような人のことですか、と問うと「誰にでも気軽に話しかけられる人」「相手の気持ちを考えて発言できる人」「話し上手な人」「きちんと聞くことができる人」「空気が読める人」など様々な答えが返ってくる。中には「頭の回転がはやい人」という答えもあり、各人が持つコミュニケーション能力のイメージが多様であると同時に共通点も垣間見える。大学生にとってコミュニケーション能力は、友人関係の構築や発展のためにも、そして近い将来社会の中で仕事をしていくためにも日々意識せざるを得ない能力の 1 つである。
(一般財団法人 北海道開発協会平成24年度研究助成サマリー『就職活動を控えた大学生のコミュニケーション能力に関する意識調査-北海道の企業調査との比較-』より)
このレポートに表れているように、就職活動で「コミュニケーション能力」をアピールしたい学生たちは、それを「誰にでも気軽に話しかけられる能力」「相手の気持ちを考えて発言できる能力」などととらえている。
それは間違いではないかもしれない。しかし、企業が求めているコミュニケーション能力とはどんなものだろうか。
インターネットで検索すると、企業の求めるコミュニケーション能力とは、「アウトプットを理解してもらい成果を出せる力」だとか「報・連・相ができること」だとか、様々な説が出てくる。
これでは、学生も混乱してしまうに違いない。
スティーブン・R・コヴィー博士は、コミュニケーション能力について最も本質的なことを述べている。
私がこれまでに人間関係について学んだ最も重要な原則を一言でいうなら、「まず理解に徹し、そして理解される」ということだ。この原則が効果的な人間関係におけるコミュニケーションの鍵なのである。
(スティーブン・R・コヴィー『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』キングベアー出版)
とてもシンプルでありながら、考えさせられる。
まず、第一のステップである「理解に徹する」をクリアするために、コヴィー博士はパラダイムシフトの必要性を説いている。
ほとんどの人は、相手の話を聴くときも、理解しようとして聴いているわけではない。次に自分が何を話そうか考えながら聞いている。話しているか、話す準備をしているかのどちらかなのである。
(スティーブン・R・コヴィー『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』キングベアー出版)
理解に徹するために必要なのは「共感による傾聴」だ。具体的な方法については、ぜひ本書や研修を通して知っていただきたい。
「共感による傾聴」の具体的なやり方は、テクニックによるものではなく、自分の考え方を変えることだ。それによって、誰に対してでもコミュニケーション能力がグッと底上げされる。
就活生だけでなく、部下や新入社員に「コミュニケーション能力」を求めている上司の方々も、改めて、自分が要求しているコミュニケーション能力とは何なのか、本質に触れていただきたい。