「上司の指示がなくても、自分の頭で考えて動くのが良い部下である」
この定義をすぐに否定しようと思う人は、きっとあまり多くないと思われます。
しかし、「チームの生産性」という側面から考えた場合、この定義は必ずしも正しいとは言えないようです。
チームにおける心理的安全性と目的達成を両立させる
世界で最も優秀な人材が集まる企業のひとつであるGoogle。
ピョートル・フェリークス・グジバチ氏は、そこで人材育成やリーダーシップ開発に携わってきました。
彼はインタビューで、チームの生産性についてこのように話しています。
「心理的安全性」についてよく誤解されるのが、部下たちに職場で素をさらけ出してもらうために、上司から指示や厳しいことは極力言わないほうがいいというもの。これは的外れです。
ある実験で、上司から何も指示を与えられないチームと、すべて指示通りに動くチームとでは、前者のほうが圧倒的にパフォーマンスが低いという結果もあるんですよ。
Googleの上司が、チームにおける心理的安全と目的達成を両立させるために行っているのが、個人とチームの「OKR」を定めるための「1on1ミーティング」です。
(未来を変えるプロジェクト by DODA「Googleの「最高の上司」がチームの生産性を高めるためにしていること」より)
※OKR=Objective & Key Result(目標と結果)
※心理的安全性=自分の言動が他者に与える影響を強く意識することなく、感じたままの思いを素直に伝えることのできる環境や雰囲気のこと
心理的安全性について詳しくはこちらの記事を参照ください : 心理的安全性とは何か|高める方法や注意点、心理的安全性が組織に及ぼす影響などを解説
ピョートル氏はこのように、上司から指示を与えられたチームのほうが生産性が高いという例を示しました。
ただし、それは上司と部下に信頼関係がある場合のはずです。
「1on1ミーティング」で質の高い雑談をする
Googleの「1on1ミーティング」の中では、上司は部下の信念や価値観を知るために質の高い雑談をするそうです。
ピョートル氏は「上司は『あなたという人に好奇心があります』という姿勢を部下に見せ、耳を傾けるべき」と言います。
Googleのリーダーたちは部下の「心理的安全」の構築を重視し、チームの生産性、パフォーマンスを高めるために傾聴を取り入れています。
リーダーがするべきこと
同様に、スティーブン・R・コヴィー博士の長男であるM・R・コヴィーも、チームの生産性を高めるために、リーダーがするべきことは「耳を傾けること」だと説いています。
「まずは耳を傾ける」という行動は非能率的で、時間がかかりすぎるという人たちがいる。これはまったく賛成できない考え方だ。この行動は極めて実利的だと私は確信している。信頼の確立、さらにはスピードとコストに大きな好影響を及ぼすのだ。
(スティーブン・M・R・コヴィー『スピード・オブ・トラスト』キングベアー出版)
傾聴により信頼と理解を生む
人には、大なり小なり自分のことをわかってもらいたいという欲求があります。
まずは部下をはじめ相手の話を聞くことで、お互いの間に信頼と理解が生まれます。
信頼し合っているチームとともに、高い生産性をあげて仕事をしていく充実感と喜びはどれほどのもの大きいものでしょうか。
まとめ
傾聴のための具体的な方法や態度については、ぜひご紹介した著書や資料などでご確認いただきたいと思います。
リーダーとしてチームの生産性を高めようとしているならば、少し遠回りに感じられても、部下の話を尊重することを欠かしてはいけませんね。