上司と部下の間でコミュニケーションに課題を感じているビジネスパーソンは少なくない。
「会社でのコミュニケーションに困る場面は?」と聞かれれば、思い当たるシーンの1つや2つはあるはずだ。
2016年にHR総研(ProFuture株式会社)がおこなったアンケート「【HR総研】社内コミュニケーションに関するアンケート」。
そこでは、企業の大きさを問わず、コミュニケーション不全に悩むビジネスパーソンたちの姿が明らかになっていた。
具体的な回答を、いくつか紹介しよう。
<●「空気」を読んで自己業務の効率性を優先し、他人との健全なぶつかり合いを避ける。特に役職者等に傾聴力、謙虚さが欠けていた場合、「言っても無駄」、「思考停止」に陥り易い。 (情報・通信)>
<●お互いの問題点や課題を指摘し合わない。感じたことを口にしない。直接言わない。 (サービス)>
<●経営層が社員、特に若手社員や女性社員の本音を聞きだそうとする姿勢が見られない。上辺だけのきれいごとを並べており、社員もしらけている空気がある。 (サービス)>
コミュニケーションの機会そのものがないなら、それをつくればいいだけ。
しかし、コミュニケーションの「内容」が上辺だけでは、問題は解決できない。
上辺だけのおしゃべりでは信頼関係が生まれないことは、想像するまでもないことだ。
スティーブン・M・R・コヴィーは、著書「スピード・オブ・トラスト」の中で他者との信頼を高めるためには「率直に話す」ことが大切だと記している。
「率直に話す」というのは、正直に行動するということだ。その根底には、誠実、正直、そして率直さの原則がある。前で述べたように、それは二つのことを意味する。真実を話すことと、正しい印象を与えることだ。そして、信頼を築くためには、この両方がそろうことが不可欠である。真実を話していても、間違った印象を与えてしまうことがあり得るからだ。正しい印象を与えるということは、考えを明確に伝えて誤解されないようにするということである。
「真実を話すこと」、そして「正しい印象を与えること」。
立場の差や年齢の差があったとしても、この2点を心がけることで誠実さ、正直さ、率直さが相手に伝わる。
その姿勢こそが、信頼関係を築いていくための第一歩になる。
ところで、「率直に話す」という行動は、同時に適切な配慮もしなければ信頼関係にヒビを入れる可能性もある。
コヴィー博士の指摘はこうだ。
率直に話すことは信頼を確立する上で欠かせないが、スキル、機転、的確な判断力によって調整する必要がある。このことが私の脳裏に深く刻まれたのは、私が以前、家族と共に海岸で休暇を過ごしたときのことだった。泳ぎに行こうと思ってシャツを脱いだとき、三歳の娘が私を見て「パパ!なんてお腹が大っきいの!」と叫んだ。残念ながら、それは機転や思いやりのない率直な話し方だった。
上記のような失敗をしないためにはどうしたらいいか?
コヴィー博士が「率直に話すためのヒント」としてあげている方法を、ひとつ紹介させてもらう。
他者に協力を求める。周囲の人々にこう言おう。「誰かとコミュニケーションをする際、率直な話し方ができるようになりたいと思っています。あなたとお話しているとき、何か気づいた点があったら教えてもらえませんか?」
コミュニケーションの相手となるのは、同じ会社の社員であっても「自分と異なる個人」だ。
それを念頭に置き、相手が受ける印象や他者の気持ちを想像すること。
会社内コミュニケーションにおいて大切なことは、人間関係の基本であるということを覚えておきたい。