「忠誠心」と聞くと、若い社員たちは身構えるかもしれない。
社畜という言葉が一般的になった現代の日本では、会社に尽くしたいと考えることに疑いの目が向けられているからだ。
しかし、スティーブン・M・R・コヴィーは、著書「スピード・オブ・トラスト」の中で、信頼関係を高める要素のひとつとして忠誠心をあげている。
ここで用いられている「忠誠心」について考えてみたい。
それは、社員たちを無理に会社に服従させ社畜化させることではない。
会社や上司に対して尊敬の念をもって献身的であろうと思ってもらうため、信頼される会社、上司になることが大切だ。
社員たち、部下たちを変えようとするのではなく、会社、上司の行動を変えていく。
その姿勢に、社員、部下たちはついてくるのである。
コヴィー博士の提案する「忠誠心」を湧きたたせる行動を、具体的に2つ紹介する。
◆他者に花を持たせる
他者に花を持たせ、結果の達成に果たした役割を評価してあげることだ。花を持たせることによって、その人の貢献の意義を認めるだけでなく、創造性の発揮、協調、アイデアの自由な共有を通じて信頼を飛躍的に拡大することを社員たちに促すような環境を構築するのである。◆本人がいつもそばにいるつもりで話す
誰かの話をするとき、その人がそばにいるつもりで話すことだ。私がその重要性を学んだのは、先ほど紹介した昼食グループでの経験からだった。昼食中にその場にいない人間のことを話すことが、その場の人たち全員の信頼を損なうことに私は気づいたのだ。
(略)
興味深いことに、陰口を叩く人は、そうすることでその場にいる人たちとの間に仲間意識や信頼関係みたいなものが形成されると思っているようだ。だが、それはまったく逆である。陰で人の噂をすると、それを聞いている人たちは、自分もいなければ同じようにされているのだろうと思うのだ。だから、信頼関係に大きな悪影響を及ぼすことは明らかである。
どちらも、社員、部下たちを軽んじない姿勢の必要性を説いている。
やみくもに「会社に尽くせ」「上司の言うことを聞け」と迫るのではない。
背中を見せるという言葉があるが、自分たちの姿勢を見せること。
回り道に感じることもあるかもしれない。
しかし、それが忠誠心という強固な「絆」で結ばれた会社と社員、上司と部下という関係性を築くための方法だ。
では、もし「自分自身も評価されたい」「花を持たせてもらいたい」という思いにとらわれてしまったら?
そんなときは、元エイビス社CEO・ロバート・タウンゼンド氏の言葉が支えになるだろう。
<私の経験から言えば、信頼、忠誠心、興奮そして活力を迅速に得るのは、一兵卒として実際に仕事をした人間をしっかり評価する人である。リーダーは評価される必要はない。なぜならリーダーは身に余る評価を自ずと得ているのだから。>