「ダイバーシティ(多様性)」という言葉を聞くようになって数年が経つ。
世間の流れと同様に、自分の働く会社も推進に積極的だ。
入社当時、同期の仲間たちはお互いに半分学生のようなところがあり、わかり合えることも多く、コミュニケーションがスムーズだった。
一度馬が合えば、あうんの呼吸で進むことも多かった。
でも、今は違う。
自分の当たり前が他人の当たり前ではない。
また、それぞれの経験、仕事内容、立場の差から、意見の違いをどうしても埋められないシーンも出てきた。
同じ目的に向かっているはずなのに、どこか納得できないと感じる部分が出てくる。
正直、会社での居心地は昔のほうが良かったと思ってしまうこともあった。
この状態から、成果が出せるチームに育てるにはどうしたらいいのだろうか。
そんな悩みを持つ方は、まず、なぜ人によって異なる視点が生まれるのか理解することが大切だ。
スティーブン・R・コヴィー博士は「7つの習慣」の中で「視点は立ち位置で変わる」と述べている。
誰しも、自分は物事をあるがままに、客観的に見ていると思いがちである。だが実際はそうではない。私たちは、世界をあるがままに見ているのではなく、私たちのあるがままの正解を見ているのであり、自分自身が条件づけされた状態で世界を見ているのである。何を見たか説明するとき、私たちが説明するのは、煎じ詰めれば自分自身のこと、自分のものの見方、自分のパラダイムなのである。相手と意見が合わないと、相手のほうが間違っていると瞬間的に思う。
同質性の高い企業、チームであれば、似たような視点や価値観を持つ人が多いので、同じような意見になりやすい。
一方で多様性を持つ集団は、さまざまな経歴や個性、能力を持つ人がいるので、予想もしないような意見が出てくるというわけだ。
さらに、コヴィー博士は、こう説く。
自分の頭の中にある地図、思い込み、つまり基本的なパラダイムと、それによって受ける影響の程度を自覚し、理解するほど、自分のパラダイムに対して責任を持てるようになる。自分のパラダイムを見つめ、現実に擦り合わせ、他の人の意見に耳を傾け、その人のパラダイムを受け入れる。その結果、はるかに客観的で、より大きな絵が見えてくるのである。
多様性は組織にとってメリットにもデメリットにもなり得る。
多様な人材を集めただけでは、簡単にはうまくいかないのだ。
まずは「さまざまな違いを受容する風土」を組織やチームに築くことが、多様性を生かす第一歩となるだろう。
そのためには、全社員が多様性について正しく理解することが欠かせない。
ダイバーシティが適切に機能するようになると、異なる視点や経験がうまく刺激し合い、思いもよらなかった革新的なアイデアや創造性が生まれる。
そして、新たに斬新なサービスや製品を生み出すことができるだろう。
ダイバーシティは、我々により良い仕事、そしてより良い社会を与えてくれるに違いない。