能力開発の手法として誕生した360度評価は、近年の働き方の変化に合わせて注目されるようになりました。この記事では、360度評価の基本情報から注目される理由、適したやり方、注意点、導入後に大切なことなどを解説しています。自社で360度評価の導入を検討している人は、参考にしてください。
目次
そもそも360度評価とは?
360度評価とは、被評価者の評価時に、さまざまな立場の評価者が幅広い角度から評価する制度です。「多面評価」や「360度フィードバック」と呼ぶこともあります。
従来は上司が一方的に評価する形でしたが、360度評価では上司・同僚・部下・被評価者などが評価を実施します。被評価者の見え方は評価する人によって違いがあるため、多角的に見ることでより納得できる評価となりやすいでしょう。
360度評価が注目される3つの理由
社会の変化が、360度評価が注目されるようになったきっかけといえます。おもな3つの理由を解説します。
1.働き方の多様化が進んでいる
働き方改革やリモートワークの導入などにより、働き方の多様化が進んでいます。働く場所がオフィスだけでなくなり、労働時間も幅広い選択肢が存在します。
ただし、働き方が多様化することで、上司が関わりの少ない部下を正確に評価するのは難しいでしょう。360度評価であればさまざまな立場の人に加えて自身の評価も反映され、正しい評価がされやすくなります。
2.人材育成の重要性が増している
さまざまな業界で、人材不足が深刻です。マネジメント層の負担が増えており、かつ限られた人材を育成する重要性が増しています。360度評価ではマネジメント層だけでなく、さまざまな従業員が評価者となります。他人や自分自身を評価することで当事者意識を抱け、広い視野の獲得にも繋がるでしょう。
3.組織構造が変化している
従来は「年功序列」で、年齢や勤続年数などが重視されていました。近年では達成した成果を重視する「成果主義」へと変化しており、成果を出した従業員を正しく評価するにはさまざまな視点が必要です。360度評価では成果を多角的に評価できるため、注目されるようになりました。
360度評価の適したやり方
360度評価には、適切とされる方法があります。5つの手順を、順を追って解説します。
1.実施目的を明確なものにする
まずは、360度評価を実施する目的を明確にしましょう。一般的に、人事評価と人材育成という2つの目的にわかれます。人事評価が目的の場合は、人事評価への繋げ方を検討する必要があります。
2.運用ルールや評価方法などを決定する
運用ルールや評価方法、評価基準などを決定します。ルールや基準があいまいなまま進めると、公平性が保てず主観が入りやすくなるためです。また、どのようなタイミングに実施するか、紙を使用したアンケート方式かオンラインでの実施かなど、方式も検討しましょう。運用の形を決めることで、具体的なイメージを抱けます。
3.評価項目を定める
明確にした目的に合わせ、評価者全員が理解できる内容の評価項目を定めます。目的に合致していれば、すべての被評価者に同じ項目である必要はありません。また、一般社員と管理職で項目を変更することもあります。
一般社員は業務遂行能力について、管理職はマネジメントについて問う項目が多くするとよいでしょう。評価項目の設定が進まない場合は、目的の設定に問題があると考えられます。
4.従業員に周知徹底する
5.360度評価を実施する
従業員の理解が十分に得られたのち、360度評価を実施します。はじめはトライアルとして対象者を制限して実施し、見つかった課題を改善しましょう。実際に運用を始めた際に、トラブルが発生するリスクを減らせます。また、リマインドをかけて、一定期間内に回答が終了するようにしましょう。
360度評価導入後に大切なこと
360度評価は、導入し実施するだけでは最大限の効果は得られません。フィードバックと平均値での評価が重要です。
フィードバックを実施する
360度評価の実施後には内容を分析し、評価者と被評価者の両者にフィードバックを実施しましょう。フィードバックがなくては、360度評価の目的がわからなくなる恐れがあります。制度の形骸化を避けるためにも、フィードバックは欠かせません。
平均値で評価する
360度評価では最高評価や最低評価ではなく、平均値で評価しましょう。点数を付ける人によって、評価の付け方に違いがあるためです。最高点や最低点での評価は、あまり参考になりません。
360度評価実施のポイント
360度評価が従業員に受け入れられるために求められる、3つのポイントを解説します。
すべての従業員を対象にする
360度評価は、なるべくすべての従業員を対象に実施することが重要です。すべての従業員が被評価者となることで、公平感が増すだけでなく、当事者としてモチベーションの向上が期待できます。一方で、評価者・被評価者を特定の従業員のみの対象にすると、公平性や客観性を欠くことになります。
評価項目数を絞る
通常業務の合間に実施するため、評価の項目数は絞りましょう。項目数が多く評価に長い時間がかかると、業務に支障が出るうえ、正確な評価とならない可能性があります。一方で、項目が少なすぎると具体性や網羅性に欠けることになります。1人の被評価対象者につき、10分ほどで回答できる数の項目がおすすめです。
評価の反映先を明確にする
実施前に、従業員に対して360度評価の反映先や実施する理由を明確にしておきましょう。説明が不足していると、評価の結果を何に使用するのかわからず、従業員が不安に感じます。たとえば、昇給・昇格などの人事評価、組織運営の参考など、具体的に伝えましょう。
360度評価実施についての注意点
360度評価は、導入するだけで結果が出るという万能なものではありません。3つの注意点を解説します。
主観が反映されやすい
360度評価に慣れていない時期ほど、評価が主観的になりやすい傾向があります。被評価者に対する好みや印象などの主観で評価を実施すると、評価が正当でなくなる恐れがあります。360度評価の導入前には目的や具体的な評価基準を入念に伝え、客観的な評価ができるよう意識しましょう。
時間と手間を要する
360度評価ではさまざまな立場から1人の被評価者を評価するため、従来の評価方法と比べ時間と手間を要します。直属の上司の負担は減るかもしれませんが、他の従業員や集めた評価内容をチェックする人事担当者の負担が増えます。通常業務に支障が生じる可能性のある場合は、効率化できるテンプレートやツールの導入も選択肢に入れましょう。
継続的な実施が重要
360度評価は1度実施して終わりではなく、何度も実施しましょう。実施したのちに得られたデータは置いておくのではなく分析し、見つかった課題を修正したり、次回実施すべき施策を検討したりすることが重要です。継続的に実施することで、より精度の高い360度評価へと繋がり、効果を実感しやすくなります。
まとめ
360度評価は上司だけでなく、さまざまな評価者が多角的に評価する制度です。導入の際には目的を明確にしてルールを決め、評価項目を定めます。実施前には、あらかじめ従業員に周知しておきましょう。ただ実施するだけでなく、フィードバックが重要です。
最高の業績を上げている組織は、常に以下の4つの点を適切に実施しています。
・各階層で優れたリーダーを育成する
・個々人に効果的な習慣を形成する
・包括的で信頼性の高い文化を構築する
・共通の実行システムにより最重要目標を追求する
フランクリン・コヴィーは、上記の4つの重要領域における組織の行動変容の実現を通して
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