傾聴とは、アメリカの心理学者であるカール・ロジャーズ氏によるカウンセリング理論の実践として提唱された概念です。ベストセラー『7つの習慣』の中で著者スティーブン・R・コヴィー博士も第5の習慣として、傾聴の重要性を強調しています。
この記事では、第5の習慣の内容に触れながら、傾聴の方法やメリットについて解説します。
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目次
傾聴とは
ここでは、傾聴の意味と使われる目的について解説します。
傾聴の意味
傾聴は、米国の心理学者カール・ロジャーズ(Carl Rogers)氏によって提唱されたコミュニケーション技法です。単に相手の言葉を「聞く」のではなく、相手に対して共感や理解を示すことを重視しています。
傾聴という言葉には、相手の話に真摯な姿勢で心を込めて耳を傾けるという意味が込められています。傾聴する者は、相手の話を「聴く」姿勢を持つことが求められます。
傾聴が使われる目的
傾聴には、「聞く」のではなく、相手の言葉や感情を深く理解しようと「聴く」という漢字が用いられています。傾聴の真髄は「相手が言いたいこと」や「相手が伝えたいこと」を模索し、理解を深めることにあります。
傾聴を有効活用すれば、良好な人間関係の構築がよりスムーズに進むでしょう。
傾聴の3原則と活用シーン
ここでは、傾聴の3原則と活用シーンについて解説します。
傾聴の3要素「ロジャーズの3原則」
カール・ロジャーズ氏は、傾聴に必要な3つの要素を「ロジャーズの3原則」として明らかにしました。その3つは、「共感的理解」「無条件の肯定的関心」「自己一致」です。これらの原則は、有効な傾聴の事例に共通して見られるもので、話を聴く側の心構えとして重要です。
カール・ロジャーズ氏は傾聴を「積極的傾聴」と呼び、話を聴く側には上記3つの要素が必要であると説きました。
傾聴が使われるビジネスシーン
ビジネスにおいて、傾聴は多岐にわたるシーンで活用されます。たとえば、顧客から従業員に対する問い合わせの際などです。ほかにも、上司と部下、同僚間における打ち合わせや面談、チーム運営、商談など、多様な場面でのコミュニケーションが傾聴によって効果的に行えます。
傾聴を行うことで、表面的な会話を超えて、相手の本音や真の意図を引き出すことが期待できるでしょう。その結果、相手との信頼関係を深められ、ビジネスの成功に繋がりやすくなります。
傾聴に重要な「第5の習慣」とは
ここでは、傾聴に重要な「第5の習慣」の概要について解説します。
7つの習慣とは
スティーブン・R・コヴィー博士が提唱した「7つの習慣」は、人々が成功を追求し、望む結果を長期的・継続的に得るための行動原則です。これらの習慣は、個人の価値観や行動様式を形成するものであり、効果的な生活を築くための基盤となる考え方を提供しています。
具体的には以下の7つの習慣で構成されています。
・第1の習慣:主体的である
・第2の習慣:終わりを思い描くことから始める
・第3の習慣:最優先事項を優先する
・第4の習慣:Win-Winを考える
・第5の習慣:まず理解に徹し、そして理解される
・第6の習慣:シナジーを創り出す
・第7の習慣:刃を研ぐ
第5の習慣について、さらに掘り下げていきましょう。
第5の習慣「まず理解に徹し、そして理解される」
コヴィー博士の「7つの習慣」のなかで、特に傾聴にフォーカスしている習慣が「第5の習慣:まず理解に徹し、そして理解される」です。この内容は、相手の立場や感情をまず理解しようとすることが、コミュニケーションの質を向上させる最初のステップであるという考え方です。
第5の習慣を実践するためには、共感による傾聴が必要です。目と耳と心をフルに使い、相手の言葉や意志、気持ちを相手の身になって深く理解しようとする姿勢を持つことが、相手との関係をより深く、かつ健全に築く鍵となるでしょう。
傾聴をビジネスで取り入れるメリット
ここでは、傾聴をビジネスで取り入れるメリットについて、解説します。
信頼関係が構築できる
傾聴の技術をビジネスに活用すると、信頼関係構築が図られ、話しやすい雰囲気が生まれます。当事者が自分の言葉や感情を受け止めてもらえたと感じることで、安心感が生まれると同時に、聞き手に対する信頼感も育まれます。
特に上司と部下の間や同僚間のコミュニケーションでは、信頼関係が重要です。傾聴は、意思疎通の効率化や相互理解を高めることにも影響するでしょう。
業務が円滑に進められる
信頼関係が構築されていると、業務に関する相談や意見交換が遠慮なく行われるようになります。オープンなコミュニケーションをとることで、報連相がスムーズになり、業務が円滑に進むようになるでしょう。
また、相手の望むことや期待することを理解すれば、より適切な行動や判断が可能となります。
話し手が心情や意見を整理できる
傾聴によって、話し手は自分の内側の感情や考えを言語化する機会を得られるようになります。ひいては、自分の本当の心情や意見に気づく助けともなるでしょう。
また、自分の考えや感情を整理すれば、明確な理解や自己認識も高まります。会話を通して、自分自身を客観的に捉え、自己理解を深められます。
傾聴をビジネスシーンで実践するときのポイント
ここでは、傾聴をビジネスシーンで実践するときのポイントについて解説します。
共感による傾聴を行う
共感とは相手の視点に立ってみることです。相手の目で物事を眺め、相手の見ている世界を見るよう心がけましょう。それによって相手のパラダイム、相手の気持ちを理解するよう努力しましょう。
開かれた質問をする
相手の真意や本音を引き出すためには、開かれた質問をすることが効果的です。これにより、相手は自分の気持ちや考えを自由に表現できるようになります。
たとえば、「どうしたらよいと思いますか?」や「具体的にはどのようなアクションが必要だと感じますか?」といった問いかけを行えば、相手を問題解決の方向へ導くサポートができるでしょう。
話し手8割、聴き手2割で相槌を打つ
傾聴において、主導権は話し手にあります。聴き手は、相手の言葉に対する共感や理解を示すことに徹しましょう。
相手の言葉を繰り返す、共感の言葉を挟むなど、相手に「あなたの話をちゃんと聞いています」という安心感を与える工夫が求められます。
姿勢や表情に注意する
傾聴の際には、相手がどんな気持ちで話をしているのか、どんな精神状態なのかを注意しましょう。相手が笑っていたとしても、場合によっては作り笑いの可能性もあります。
また、聴き手は、常に中立な姿勢でいるためにも、感情を表情に出し過ぎないように気をつけましょう。加えて、話す速さや高低、大小など、適切なトーンを心がけることも重要です。
相手に興味があり、理解していることを伝える
傾聴の際には、相手への関心を態度で示すために、相手の目も見ながら話を聞く・話すことを心がけましょう。そのためには、意味を変えずに別の表現に言い換える「パラフレーズ」を実践するのも効果的です。
あなたが話を真剣に聞こうとしている誠意が伝われば、相手の心の中で思っていることと、実際に口から出てくる言葉の間の壁が消えていきます。
ビジネスにおける傾聴の活用方法
ここでは、ビジネスにおける傾聴の活用方法について解説します。
マネジメントへの活用
マネジメントにおいては、部下から本音を引き出すことが大切です。傾聴によって部下が自分の意見や感情をオープンに表現しやすくなり、その結果、部下との間に信頼関係が築かれる効果が期待されます。信頼関係は、部下が上司を信じ、自らの考えや提案を積極的に共有する基盤を作り出すでしょう。
そのため、部下と話す際には傾聴を用いて話しやすい雰囲気をつくるよう心がけましょう。人間関係が円滑に構築できれば、組織力・団結力が上がり、結果的に業績も向上します。
顧客対応への活用
傾聴を活用すれば、顧客の真の課題を特定し、言葉の裏にあるニーズを把握できます。
表面的な言葉だけでなく、背後にある感情や動機を理解すれば、サービスの改善点や新たな商品開発のヒントを得られるでしょう。
また、クレームやフィードバックを傾聴することで、顧客の不満点を早期にキャッチし、迅速な改善を図ることが可能となります。顧客が「真摯に聞いてもらえた」と感じることで、より信頼関係も深まるでしょう。
まとめ
ビジネスにおける傾聴は、単なる会話の技法ではなく、相手の真の思いや意図を深く理解するための重要な手段です。「第5の習慣」の内容も含め、傾聴の重要性について再度確認をしておきましょう。
そのほかにも、ビジネスにおいて重要な事柄は数多くあります。最高の業績を上げている組織は、常に以下の4つのことを適切に実施しています。
・各階層で優れたリーダーを育成する
・個々人に効果的な習慣を形成する
・包括的で信頼性の高い文化を構築する
・共通の実行システムにより最重要目標を追求する
フランクリン・コヴィーはこの4つの重要領域における組織の行動変容の実現を通して
「お客様の成功」に貢献するサービス提供や支援を行っています。傾聴の実践も含め、ビジネス全般におけるアドバイスやサポートを求めている人は、ぜひご相談ください。