KPIやMBOにかわる新たな人材マネジメント手法として、OKRという手法が注目されています。今回は、OKRの概要やメリット、導入方法や事例などを紹介します。
OKRの特徴や向き・不向きを理解し、自社への導入を検討してみてください。
目次
OKRの基礎知識
はじめに、OKRの概要や特徴、具体例について解説します。
OKRとは
OKRは、目標管理・人材マネジメントの手法です。Objectives & Key Results(目標と成果)の略称で、チームの一体感や生産性、従業員のモチベーションを高めるために効果的といわれています。
GoogleやMeta(旧: Facebook)が採用したことでも注目を集めました。
Objectives & Key Resultsとは
OKRでは組織全体や組織の部門、個人など、階層ごとにObjectiveとKey Resultsを設定します。
Objectiveは目標、Key Resultsは目標達成における具体的な指標を意味します。
目標やタスク設定のスパン
OKRは高頻度で目標と指標を見直します。
目安としては、1〜2週間の頻度で振り返りをし、1〜3か月に1回の頻度で新しい目標や成果を設定します。
OKR独自の特徴
OKRでは組織内で設定した目標を全従業員に公開することで、従業員同士の交流をうながします。
また、難易度の高い目標設定にチャレンジすることも推奨されます。このため、OKRが達成できたかどうかは、人事評価に直接は影響しません。
Objectiveの具体例
Objective(目標)には、
● サービスの質で業界をリードする組織になる
● 従業員のコストに関する意識を変える
● 専門性を身に付けた人材を増やす
など、事業の方向性などを設定します。
Key Resultsの具体例
Key Results(具体的な指標)を設定する際は、Objectiveが実現したら達成されるであろう状態を、客観的な数値で表します。
たとえば、
● ひと月当たりの売上200万円以上
● 従業員を5名採用する
などが挙げられます。
OKRと他の目標管理ツールの違い
ここでは、OKR以外の目標管理・人材マネジメント管理の手法である、KPIやMBOとの違いについて詳しく解説します。
OKRとKPIとの違い
KPIとは、Key Performance Indicatorの略称です。
KPIは組織の中間業績を評価するために使われ、達成されなければ人事評価に影響が出る可能性があるという点がOKRとの大きな違いです。
OKRとMBOとの違い
MBOとは、Management by Objectivesの略称です。
OKRが組織全体、部署全体などでも設定されるのに対し、MBOは主に個人やチームで目標を設定します。MBOもKPIと同じく、業務達成状況による人事評価に活用されます。
OKR導入のメリット
組織がOKRを導入することには、どのようなメリットがあるのでしょうか。代表的な5つのメリットを解説します。
従業員全員で目標を共有できる
作成されたOKRは、定期的に共有や見直しがなされます。
従業員全員で目標を共有できるため、組織の規模が拡大したり、市場で求められる価値が変化したりしても柔軟に対応できます。
コミュニケーションの促進につながる
全てのOKRは組織全体に公開されるため、組織内の他のチームや従業員の現状を把握しやすくなります。チームの垣根を越えたコミュニケーションが生まれやすい環境が構築されるといえるでしょう。
目標の調整が容易
OKRは、比較的早いスパンで新たな目標を設定し直すといった柔軟な調整が可能です。
状況や環境に合わせて臨機応変な対応ができるため、従業員のモチベーションを常に最大限保つための目標設定ができます。
従業員の、組織への貢献度を高める
全てのOKRが組織全体に共有されることで、従業員は自分がどの程度、そしてどのような側面から組織に貢献できているのか、実感しやすくなります。貢献度が実感しやすくなると、従業員のモチベーションが高まり、業務生産性向上も見込めるでしょう。
目標に集中できる
OKRを設定後、従業員は目標を達成するため業務に集中して取り組めます。目標が明確に設定されているため迷うことなく仕事ができ、結果的に仕事の能率やモチベーションも高まりやすくなるのです。
OKRの導入・運用ステップ
ここからは、実際にOKRを導入・運用するときの流れを解説します。
組織全体のOKRを設定
最初に、組織や事業全体のOKRを設定します。このときは、できれば全従業員からのアイデアやフィードバックを取り入れましょう。
設定後は、全ての従業員にOKRを共有します。
チームごとにOKRを設定
組織全体のOKRをもとに、各部門やチームのOKRを設定します。ここでも、トップダウンではなくボトムアップでの決定を心がけることで従業員全体の理解が得られ、モチベーションの向上につながるでしょう。
個人のOKRを設定
チームのOKRを決定後、個人のOKRを設定します。決定の際には、マネージャーやチームメンバーとすり合わせながら、組織全体やチームのOKRと連動した目標を検討することが重要です。
毎週1回程度、進捗確認をする
OKRを設定後は、定期的に1on1やチーム全体でミーティングをします。
目標にどの程度近づいているのか、状況に変化があったのかを共有することで、メンバー間での協力をうながし、状況の改善をはかります。
中間レビューをする
OKRは1〜3か月を1期間とし、期間の中間地点で全体的な状況や改善点を議論します。場合によっては最終目標を変更するなどして、従業員のモチベーションを維持できるように柔軟な対策が必要です。
最終レビューをする
1期間が終わったあとに、最終的なレビューの時間を取りましょう。どの程度OKRが達成できたかを各自で検討し、チーム内で共有します。
組織やチームごとに達成度合いを評価するための点数を付け、目標までの現在地を数値化するのもおすすめです。
次の四半期のOKRを設定する
最終レビューを参考に、次の期間のOKRを設定します。この際にチーム全体のOKRを変更する場合は、他のチームなどともすり合わせながら、組織全体で統一性の取れた目標を設定しましょう。
OKR導入が向いている組織・職種
OKRの導入には、実は企業や組織によって向き不向きがあります。OKRに向いている組織や職種、そして導入を慎重に検討するべき組織や職種について、具体的に解説します。
向いている組織・職種
OKRは、スタートアップやベンチャーなど、組織目標を社内で統一しながらも、柔軟に変更する必要のある組織に向いています。
大規模組織であっても、組織の実現したい未来像を従業員全体と共有したい場合はOKRが有効です。
慎重に検討するべき組織・職種
一方で、OKRの導入を慎重に検討したほうがよい組織や職種も存在します。
たとえば、OKRのフィードバックにかける時間を確保できない事業やプロジェクトは、OKRを導入してもあまり効果が得られません。
またOKRを導入するのは、従業員に高いモチベーションを持って働いてもらうためです。達成難易度の高い目標を掲げることも推奨されますから、目標管理と人事評価を兼用したい場合にも、OKRは不向きといえるでしょう。
組織によっては、KPIやMBOのほうが従業員の力を引き出せるケースもあります。目標や文化に応じて、適切なツールの導入を検討しましょう。
OKR導入時の注意点
OKRを実際に導入するときには、どのようなことに気をつければよいのでしょうか。ここでは4つの注意点を解説します。
目標の難易度を適切に設定する
OKRの設定時には、適切な難易度を見定めることが重要です。
たとえば、達成難易度の高すぎる目標は、むしろモチベーション低下につながるリスクもあります。一方、簡単に達成できる目標では、組織の業績が停滞してしまうことも考えられます。
失敗を恐れない
最初から適切なOKRを設定できることはほとんどありません。特に導入直後は、OKRの効果があまり出ないように感じるケースもあることは事前に理解しておきましょう。改善を繰り返すことを前提に考え、中長期スパンで組織や人材改善を行うという意識が必要です。
人事評価には利用しない
OKRを人事評価に利用すると、従業員がOKRを設定する際、達成が簡単な目標を設定してしまうことがあります。組織の成長が阻害されるのを防ぐためにも、OKRは人事評価に利用しないことを心がけましょう。
部署内でのコミュニケーションを重視する
OKRを適切に設定するためには、チームの垣根をこえた組織全体でのコミュニケーションが必要不可欠です。
普段から定期的に1on1やチームでミーティングを実施することにより、風通しのよい環境を構築しましょう。
OKRの導入事例3選
ここからは、実際にOKRを導入している組織の例を解説します。
1.株式会社メルカリ
株式会社メルカリでは、創業初期(2015年)の段階でOKRを採用しており、OKRが企業の文化として根付いています。
特にKey Resultsの立て方に力を入れており、設定したOKRは高頻度で見直すなどして、従業員のモチベーション維持につなげています。
2.GMOペパボ株式会社
GMOペパボ株式会社では、2019年からOKRの導入が検討され始めました。当初は人事部門のみでの実施でしたが、その後全組織で導入されました。
導入後のアンケートでは、チームや個人の生産性が上がったと考える従業員が多いと分かっています。
3.花王株式会社
2021年度からOKRを導入した花王株式会社。OKRの共有やコミュニケーションの強化に力を入れており、全従業員のOKRを検索し、同じ関心事を持つ仲間を探せるツールを独自に開発しています。
まとめ
OKRを導入することで、環境変化に素早く対応できたり、従業員同士のコミュニケーションが活性化されたりするなどのメリットが生まれます。すでに多くの組織で採用されており、よりいっそうの普及が予想されます。
組織やチームの文化などをよく観察した上で、前向きに導入を検討してみるとよいでしょう。
優れたリーダーの育成や、従業員1人ひとりに向けた効果的な習慣の形成、包括的で信頼性の高い文化の構築、重要目標を追及できるシステムの導入など、お客様の成功に貢献するサービスや支援を提供しています。
組織開発・人材育成において、課題があり、改善・解決をしたいとお考えなら、ぜひフランクリン・コヴィー・ジャパンにこちらからご相談ください。