昨今多くの企業では、より良い環境づくりが重要視されており、特に「心理的安全性」という観点から組織のありかたを見直すことに注目が集まっています。
この記事では、心理的安全性を高めて、生産性の高い組織を作りたいと考えている担当者の方向けに、心理的安全性を高めるメリットや、具体的な方法を解説します。是非、組織改善の参考にしてください。
目次
心理的安全性とは
心理的安全性とは、組織のなかで人間関係への影響などを気にすることなく、自分の意見を臆さずに発言できる状態のことを指します。
立場や年齢に関わらず誰がどんな発言をしても、発言を拒絶されたり、処罰の対象になったりすることがなく、自由に新しい意見を出せる組織は、心理的安全性が保たれていると言えますます。
反対に、従来のやり方や考え方に異議があっても、拒絶や処罰を恐れて発言できないような組織の場合、心理的安全性が低いと判断できます。
心理的安全性についてより詳しく知りたい方はこちらをご確認ください :心理的安全性とは何か|高める方法や注意点、心理的安全性が組織に及ぼす影響などを解説
心理的安全性が注目される背景
Googleは、2012年から取り組んでいる生産性向上プロジェクト「プロジェクト・アリストテレス」において、さまざまな組織を対象に約4年をかけて調査・研究を行いました。
その結果を受け、「心理的安全性は成功するチームを構築するために最も重要なものである」と提言したことがきっかけで、心理的安全性について世界的に注目が集まりました。
Googleの情報サイトである「re:Work」にて発表された「チームを成功へと導く5つの鍵」のなかでも、心理的安全性は他の4つの要素を支える土台として位置付けられています。
心理的安全性が低い職場で起こる「4つの不安」
生産性の高い組織を作るために重要な要素となる「心理的安全性」ですが、低い状態の組織では、以下のような4つの不安が起こってしまいます。
どの様な不安が起きてしまうのか、それぞれについて具体的に解説します。
1.「無知」だと思われる不安
心理的安全性が低い環境の場合、「そんなことも知らないのか」と思われるのではないかという不安から、質問や発言を躊躇してしまうようになる可能性があります。
質問や相談がしにくくなると、知識不足のまま業務を進めてしまい、ミスの原因になりかねません。また、コミュニケーション不足から人間関係が円滑にいかない原因となってしまう可能性もあります。
2.「無能」だと思われる不安
心理的安全性が低いと、仕事がうまく進められない、ミスをしてしまったという場面で、仕事ができない「無能」な人間だと思われてしまうのではないか不安に陥ってしまう場合があります。このような不安に駆られると、ミスや失敗を報告しなければならない場面で隠したりしてしまうかもしれません。
失敗を認めないことや、報告すべきことを報告しないことが増えてしまうと、後に大きなトラブルにつながってしまうこともあります。
3.邪魔だと思われる不安
心理的安全性が低い職場では、自分の存在が迷惑になっているのではないか、組織の邪魔になっていないかと不安に陥ってしまうこともあります。このような不安を感じると、自主的な発言を控えてしまったり、発言したくてもできなくなったりしてしまいます。
従業員それぞれが本来の能力を発揮できなくなるため、新しい意見やアイデアが出にくい組織になる可能性があります。
4.ネガティブな人だと思われる不安
心理的安全性が低くなると、自分の意見を言うことで、相手を否定していると捉えられないか、いつも否定的な意見を述べていると思われないかなどの不安に陥ることもあります。
問題点やリスクに対する意見を言えなくなってしまうため、誰も気づかずに進めてしまう恐れがあります。
心理的安全性を高めるメリット
心理的安全性に注目が集まっているのは、高めることでさまざまなメリットが得られるからです。
ここからは、心理的安全性を高めることで期待できるメリットについて解説します。
パフォーマンスを最大化できる
意見を言うことによる対人関係の不安がなくなるため、本来のポテンシャルを発揮できるようになります。安心して発言でき、自分の意見も受け入れてもらえることから、自信や向上心も生まれます。
不安や緊張があればパフォーマンスは低下してしまいがちですが、心理的安全性が高まることでリラックスできるようになり、パフォーマンスも向上します。それぞれの能力が最大限に活かされることで、組織全体の業績アップにつながるでしょう。
コミュニケーションが活発化する
周囲からの否定を恐れずに活発な意見交換ができるようにもなります。発言に対するハードルが低くなるため、従業員同士のコミュニケーションが活発になるのは組織にとってメリットです。
自分の意見を隠さずに発言できるようになるほか、新しい意見の提案や相手のミスへの言及も臆せず行えるため、お互いに切磋琢磨し合うことが可能です。
イノベーションが生まれやすくなる
それぞれの意見や考え方を否定することがなくなるため、色んな価値観を持った人材が集まりやすくなります。それにより、いろんな意見やアイデアが集まりやすくなるため、創造性に富んだアイデアが生まれやすくなります。
多様な人材の情報共有や意見交換が活発に行われることで、組織のイノベーションをもたらすことにつながります。
離職率の低下につながる
心理的安全性が高くなれば、自分を隠すことなく発言しやすくなり、リラックスしながらも仕事にやりがいを感じられるようになります。
やりがいがあり、さらに居心地の良い職場になることで、人材の定着率の向上にもつながります。新しく人材を確保するための採用コスト軽減や、優秀な人材の流出防止にも繋がるなど、心理的安全性を高めることで幅広いメリットが得られます。
心理的安全性を高める7つの方法
ここからは、さまざまなメリットが期待できる心理的安全性を高める方法について、具体的に7つに分けて解説します。
1.意見を出しやすい環境を作る
部下が上司の顔色を伺っていたり、なかなか意見が出ずに自分も発言しにくかったりする状況では、積極的な発言がしにくくなります。
誰でも臆せずに意見を出しやすい環境にするためには、上司と部下であっても普段からこまめにコミュニケーションをとることや、いろんな場面で積極的に周囲に声を掛け合うなど、話しやすい関係を作っておくことが大事です。
2.発言の機会が均等になるようにする
発言の機会となりやすい会議などの発言システム自体を見直すことがおすすめです。特定のメンバーだけが発言するような状態であれば、全員が1回は発言できるように工夫したり、最後に意見交換する時間を設けたりすると良いでしょう。
発言することのハードルを下げ、メンバー全員が自由に意見を述べられるようにすることが理想です。
3.雑談により信頼関係を構築する
業務上の関係だけでなく、業務外の話題や趣味趣向について話せる雑談の機会を作ることで、信頼関係を構築することも重要です。信頼関係が築ければ、自分の意見や考えを言うことへのハードルを下げられます。
コミュニケーションを繰り返すことで、本音を話せる関係性を作ることが心理的安全性を高めることにつながります。ランチ会や飲み会、定期的な1on1ミーティングを設けるのも有効です。
4.多様性を尊重する
多様性が尊重されていれば、大多数の意見と異なる意見や新しい意見なども言いやすくなり、発言への不安感が減ります。
人それぞれ価値観は違うため、お互いに尊重し合って意見を受容すれば、職場への信頼感や安心感に繋がります。
周囲に笑顔で接する、相手の目を見て話をきく、相手を意見や考え方を馬鹿にしないなど、基本的な事柄ができているかも大事なポイントです。
5.チームの共通認識を持つ
何を目指しているのか、何のために発言して意見を言い合うのかについて、チーム全体で共有して、同じ方向性を保つことが重要です。
明確に目的があれば、自分の発言に対する重要性に気づき、いい意見を出すために向上心も生まれます。認識がずれていると不信感に繋がってしまうこともあるため、共通認識を持つことは心理的安全性を高めるためには大事な要因です。
6.ピア・ボーナスを取り入れる
ピア・ボーナスは、助けてくれた相手や貢献してくれた相手に対し、お互いに感謝の気持ちをメッセージやポイント、報酬などの形で送り合うシステムです。
賞賛や感謝の気持ちが可視化されることで、エンゲージメントの向上にも繋がります。
7.サポート体制を確立する
自分の意見を発言できるような安心できる環境を作るには、お互いにサポートし合える体制を確立することも重要です。先述した1on1ミーティングの実施やマネージャーのポジションを作るなど、特に新人などの立場が弱いメンバーのサポートが行き届くような工夫が求められます。
緊張感やプレッシャーを感じてしまうと、発言しにくくなってしまうため、日頃からチームのメンバー同士でサポートし合い、安心感を高めることが大事です。
心理的安全性を高めるうえで気をつけるべきこと
安心感や信頼性を確保するために、それぞれの人間関係を円滑にすることが重要ですが、仲良しで居心地がいいだけの職場にならないよう、仕事の基準を高く持つことも大事です。
ただの馴れ合いになってしまうと、同調してしまったり、反対意見を言い出しにくくなってしまったりするため、逆に生産性が悪くなってしまう恐れがあります。心理的安全性を高めることで生産性向上につなげるためには、仕事に対する意見や指摘に対してはっきりと発言でき、人間関係も良好な環境を目指すことが重要です。
まとめ
心理的安全性は、企業の生産性を高めるためには重要となる要因です。心理的安全性を高くすることで、全体がのびのびと働くことができるようになり、企業の利益へとつながっていきます。
組織の生産性を向上させるリーダーの条件 〜どのようにして「心理的安全性」を創り出すか〜
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