近年、ビジネスでは「レジリエンス」という言葉が注目されています。レジリエンスとは、「復元力・回復力・弾力」という意味ですが、ビジネスにおいてはどのように使われているのでしょうか。この記事では、レジリエンスの意味や使い方、注目されている背景を解説します。レジリエンスを高めるトレーニング、企業が取り組むべき課題なども解説しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
レジリエンスの意味・使い方
レジリエンスの心理学的な意味やビジネスにおける使い方を解説します。
心理学的な意味
レジリエンスの一般的な意味は、回復力や復元力などです。心理学では、困難や逆境に適応する能力、適応するまでの過程や結果などを意味します。レジリエンスはビジネスマンに必要な能力であり、身につけておきたい心理的なスキルでもあります。
ビジネスにおける使い方
ビジネスにおけるレジリエンスとは、企業の耐久力や逆境に対する反発力・忍耐力などを意味します。企業リスクへの対応力や危機管理能力などを評価する企業評価指数のひとつです。レジリエンスが高いほど顧客やユーザーから信頼されます。
レジリエンスが注目される背景
ビジネスにおいてレジリエンスが注目されている背景について解説します。
時代の急速な変化
VUCA(ブーカ)時代に突入し、ビジネスにおいてもでも将来の予測が難しくなりました。さまざまな変化に柔軟に対応することが求められます。
従業員のメンタルヘルス問題
心理的な不調を訴える従業員が増え、ストレスチェックも義務化されています。企業も対策を講じなくてはなりません。
労働力不足への対応
少子高齢化の加速とともに、労働力不足が深刻化しています。企業は、労働環境の変化に対して柔軟な対応が必要です。
緊急時における対応
企業は自然災害や感染症の拡大など、不測の事態への対応も求められます。時代に適した組織への転換は急務です
レジリエンスの6つのコンピテンシー(行動特性)
ここでは、レジリエンスのコンピテンシー(行動特性)を6つ紹介します。
自己認識
自己認識意識とは、自分の思考や感情、行動パターンを認識する能力です。客観的な自分の強み・弱みを知ることでもあります。
自己コントロール
自己コントロールとは、自分の欲求や感情をコントロールすることです。
現実的楽観性
単なる楽観主義ではなく、ストレスや出来事をポジティブに捉える力ですます。現実的に解決策を追求するために必要です。
精神的機敏性
物事を多角的、俯瞰的に把握し、感情任せにせず冷静に判断する能力ですします。先入観や慣習にとらわれない行動も大事です。
徳性の強み
徳性とは、人が守るべき道徳心のことです。自分の道徳心に従い、自分の強みを活かすことが大切です。
人との関係性
人とのつながりを深める言動が大事です。良好な人間関係を築くことがは、ときにビジネスの成功を左右することもあります。
レジリエンスを構成する3つの要素
レジリエンスには3つの重要な要素があります。ここでは、レジリエンスを構成する要素について解説します。
新奇性追求
新奇性追求は、レジリエンスの重要な要素です。過去の経験や習慣にとらわれずに、人や現象、出来事などに関心を持つことが大切です。これまでの活動に縛られず、新しい物事や活動に邁進できます。
感情調整
感情は人の行動を大きく左右する要素です。常にポジティブな感情をキープすることは難しいかもしれませんが、ネガティブな感情では建設的な発想は浮かびにくくなります。心理的プロセスを自分でコントロールしなければなりません。
肯定的な未来志向
肯定的な未来志向は、未来に対する期待につながります。自分の未来のビジョンを明確にし、肯定的で明確な目標を立てることはにより、精神的回復を図るために必要な要素です。
レジリエンスの危険因子と保護因子とは?
レジリエンスには、危険因子と保護因子があります。ここでは、危険因子と保護因子について解説します。
危険因子とは
危険因子とは、災害や事故、病気、人間関係のトラブルなど、ストレスとなり得る因子のことです。危険因子に向き合い、柔軟に対応することが求められます。
保護因子とは
保護因子は、困難な状況を克服するために役立つ因子です。個人の考え方や特性、相談相手、協力関係などが保護因子になり得ます。良質な保護因子が多いほどレジリエンスが高まりやすく、困難な状況にも対応できるようになります。
レジリエンスがある人の特徴
レジリエンスが高い人とは、どのような人なのでしょうか。ここでは、レジリエンスがある人の特徴について解説します。
物事を柔軟に捉えられる人
物事を前向きに捉えたり、柔軟に捉ええられたりすることは、レジリエンスが高い人の特徴です。困難な状況や逆境に直面しても、ポジティブに捉えることができますます。ひとつの考えに縛られず、柔軟に発想の転換ができることも特徴です。
感情のコントロールができる人
感情のコントロールができる人は、目の前の状況に感情的にならずに冷静に物事を判断します。感情に振り回されることなく適切な行動ができるため、トラブルや困難を解決に導きやすくなります。
楽観的な人
楽観的であることも、レジリエンスが高い人の特徴です。ただし、物事を放置するような楽観主義者とは異なります。困難に直面しても目的を達成するために、前向きな思考と言動で適切な解決策を見いだせる人のことです。
挑戦を続けられる人
挑戦を続けられることも、レジリエンスが高い人の特徴です。失敗を恐れずに挑戦し、たとえ失敗しても改善策を見出し、諦めずに何度も挑戦します。失敗を自己の成長の糧になるものと捉え、次につなげていきます。
信頼関係を築ける人
上司や同僚と信頼関係を築けることは、レジリエンスが高い人の特徴です。積極的にコミュニケーションをとり、お互いに協力できる関係を築きます。困難に陥っても、周囲が助けの手を差し伸べてくれます。
レジリエンスを高めるメリット
レジリエンスを高めることで、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、レジリエンスを高めるメリットを解説します。
トラブルや問題に対処できる
レジリエンスが高ければ、トラブルや問題が起こっても、適切な解決策を講じて対処できます。慌てることなく冷静に対応できるからです。仮に解決策が失敗であっても、別の解決策を試すなどしてくじけずに乗り越えられるでしょう。
ストレスに強くなる
仕事で高いパフォーマンスを発揮するには、適度なストレスが不可欠です。レジリエンスを高めることでストレスへの耐性が高くなるだけではなく、適切なストレス対処もできるようになります。
変化に適応できる
レジリエンスを高めていれば、転勤や出向などで職場環境が変わっても柔軟に対応できます。新しい職場環境に馴染みやすくなるため、早くから実力を発揮できるでしょう。変化への適応は、自己の成長にもつながります。
レジリエンスのトレーニング方法
レジリエンスを高めるには、トレーニングが必要です。ここでは、3つのトレーニング方法を解説します。
冷静に現実を受け止める
常に冷静を保ち、現実を受け止めるように努めます。現実的な解決策を見出して行動することも大事です。問題が大きすぎる場合は、自分では変えることができない状況であることを受け入れるようにしましょう。もしくは、問題を分解したうえで、自分が影響を与えたり、改善できることがあれば、そちらに集中して行動しましょう。
考え方を変える
自分の考えが間違っていないかを検証し、自己反論することを心がければ、正しい答えにたどり着きます。たとえ危機的な状況に陥っても、克服できると自分を信じることが大切です。
サポートを得る
自分だけでは対処できない状況であれば、素直に苦境にあることを周囲に伝えます。有能な上司の助力や周囲からのサポートがあれば、対処できることも少なくありません。必要な時に助力やサポートを得るためには、普段から良好な人間関係を築くための心配りを欠かさないことが大事です。
組織としてレジリエンスを高めるべき理由
組織全体でレジリエンスを高めることも大切です。ここでは、組織としてレジリエンスを高めるべき理由を解説します。
離職率の低下につながる
組織のレジリエンスが高くなると、従業員は活き活きと仕事に取り組むようになります。ストレスへの耐性も高まり、ストレス対処も上手になるでしょう。結果として離職率が下がり、従業員の健康状況も良くなります。
多様性のある組織を実現できる
組織のレジリエンスが高まれば、多様性のある組織づくりが可能です。労働人口が減少しても、外国人や高齢者などが活躍するダイバーシティ・マネジメントに取り組めるようになります。異なる価値観を受け入れる組織づくりが大切です。
変化やリスクに柔軟に対応できる
組織を取り巻く環境は、急激に変化したり、災害に巻き込まれたりすることがあります。組織の変革を強いられるケースもあるでしょう。組織のレジリエンスが高ければ、どのような変化やリスクにも柔軟に対応しやすくなります。
企業のレジリエンスを高める方法
企業のレジリエンスを高めるためには、どのような方法が有効なのかを解説します。
複数のシナリオを描く
企業のレジリエンスを高めるには、シナリオプ・ランニングを活用します。シナリオ・プランニングとは、将来起こるかもしれない事態を予測してシナリオを描くことです。多くのシナリオを準備して、企業としてどのように対処するのかを事前に考えておきましょう。
独自のブランド力を持つ
企業独自のブランド力を持つことは、企業レジリエンスを高める近道です。ブランド力があれば、企業を取り巻く環境の変化にも対応しやすくなり、企業存続の可能性が高まります。商品やサービスの価値を高めるブランディングを図りましょう。
組織内の心理的安全性を高める
組織内の心理的安全性を高めることで、企業レジリエンスを高められます。社内の心理的安全性を担保すれば、従業員はアイデアを出しやすくなり、生産性も高くなります。ミスや問題も共有しやすくなり、組織全体で問題解決を目指せるでしょう。
参考資料:組織の生産性を向上させるリーダーの条件 〜どのようにして「心理的安全性」を創り出すか〜
レジリエンスを高めるために企業が取り組むべきこと
企業がレジリエンスを高めるためには、変化に対応できる体制づくりが重要です。たとえば、緊急時でも事業の存続を可能にするには、BCP(Business Continuity Plan / 事業継続計画)策定を行うことが有効でしょう。また、従業員の多様性を認め、それを重視した採用活動を行うことも大切です。多様性を浸透させるためには、日頃の社内コミュニケーションの活性化や人材育成も欠かせません。
まとめ
レジリエンスは、人材育成や企業の成長、存続に欠かせない要素です。従業員のレジリエンスを高めることで、ストレスに強くリスクを恐れずに行動する従業員を育てられます。企業そのもののレジリエンスを高めることも可能です。
従業員や企業のレジリエンスを高めるには、自社の人的リソースやノウハウだけでは難しいかもしれません。フランクリン・コヴィー・ジャパンでは、組織の目標達成や課題解決を支援するプログラムを提供しています。レジリエンスの高い組織を実現するために、ぜひご活用ください。