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戦略の実行プロセスで注意すべき5つのポイントとは   ②「Initiative」(イニシアティブ:戦略目標設定)を実践する

「Initiative」(イニシアティブ)はリーダーの最大の役割

「イニシアティブ」とは、問題を解決するための構想や戦略、または新たな取組みのことを指します。まさに、リーダーの大きな役割のひとつであり、組織やチームを導くために必要なコンピテンシーであり、能力です。

戦略や目標と言わずに、あえて「イニシアティブ」と表記しているのは、ここでのリーダーの役割とは、単なる目標設定や戦略策定、たとえば、昨対10%アップといった何の根拠も戦略もない目標設定や、過去の業務とほぼ変わらず、行動変容を伴わない戦略などを設定することではありません。

これまで得ることができなかった成果を得ようと思うならば、これまでとは異なる戦略、行動をとる必要があるわけです。いわゆる「業務目標」ではなく、「戦略目標」が設定されなければなりません。

効果的な「イニシアティブ」が発揮された状態とは、概念化能力を屈指し、戦略的思考に基づいた状況変化を生み出す戦略目標が設定されている状態です。

しかし、多くの場合は、もともと中期経営計画で設定された財務的な数値や抽象的な課題が、そのまま役割ごとに分割されて降りてきているだけの状態ではないでしょうか。極端な言い方をすれば、伝言ゲームのように上位組織から降りてきた目標を、単純に下位組織に落とし込んでいくパターンになってしまっているケースが、大半のようです。

本来、組織(ユニット)やチームのリーダーは、自分たちチームにおける固有の課題や小さな環境の変化を感じとり、メンバーの行動変容につながる戦略を、主体的に策定しなければなりません。

イニシアティブに必要なコンセプチュアル・スキル

こうした戦略を策定するには、業務遂行のためのスキルや、その遂行に必要なコミュニケーション・スキルにとどまらず、コンセプチュアル・スキル(概念化能力)や戦略的思考能力が必要です。

コンセプチュアル・スキル(概念化能力)とは、経営学者のロバート・カッツが提唱する「カッツ理論」の中で提唱されたスキルのことで、ビジネス・パーソンとして成果を上げ続けていくには、3つのスキル(1,コンセプチュアル・スキル:概念化能力、2,ヒューマン・スキル:対人関係能力、3,テクニカル・スキル:業務遂行能力)が必要であり、組織のリーダー層に近づくほど、1のコンセプチュアル・スキル:概念化能力が必要だとしています。

では、どうすればコンセプチュアル・スキルを身につけ、戦略的な目標を策定することができるのでしょうか。コンセプチュアル・スキルは、様々なスキルが合わさったものであるとも言えます。

たとえば、ロジカルな思考スキルも必要です。論理的に導かれた戦略は、成功の確率も上がります。また、ロジカルに導かれた戦略でなければ、周囲のスタッフや上司に説明できませんし、上司はもちろん、部下やチームメンバーは納得できないでしょう。

また、クリティカルシンキング(批判的思考)の思考スキルも必要です。従来のパラダイムに引きずられることなく、「本当にこれでいいのか?」と考える姿勢は常に必要です。

物事を多角的に考えたり、多面的にとらえたりする能力も必要です。物事を客観的に判断し、本質をとらえることができなければ、間違った方向に行きがちです。

さらに、リーダーとして自分とは異なる価値観を受け入れたり、状況に応じて柔軟に考えるスキルも必要です。
つまり、概念化能力に長けているというのは、ひとつのことから、多くのことを学ぶ人であり、逆に、多くのことから共通する本質的な課題を見つけて解決方法をつくることができる人ということができるでしょう。

コミュニケーション・スキルによってTranslate(翻訳)する


このようなコンセプチュアル・スキルによって策定された戦略目標は、前述した「2,ヒューマン・スキル:対人関係能力、3,テクニカル・スキル:業務遂行能力」によって、チームメンバーに伝えることが必要となります。

つまり、せっかくコンセプチュアル・スキルを行使し、充分すぎるほどの分量の戦略思考による成果物ができ上ったとしても、それが現場に落とし込まれて使えるようには、Translate(翻訳)される必要があるわけです。

メンバーの具体的な仕事内容を把握したうえで、十分なコミュニケーション・スキルによって、メンバーの具体的な業務に沿って落とし込むことができれば、チームメンバーは、新たな戦略目標の達成に向かう準備ができたことになります。

【調査レポート】企業の成長につながる、重要な戦略の実行に関する調査

フランクリン・コヴィーは、「重要な戦略や目標がなぜ実行されないのか」というテーマについて、大手企業に勤務するビジネス・パーソン1000名を対象に調査を行いました。
この調査の中で「チームの戦略・戦術を理解していない」個人の割合が6割以上というショッキングな結果が明らかになりました。

現在のような情報社会においては、多くの企業で戦略策定に、時間やリソースをかけ、綿密な戦略を策定されています。特に、このコロナ禍において、多くの企業がこれまでとは異なる戦略への転換を余儀なくされました。

経営コンサルタントとして著名なラム・チャランが「戦略の失敗の70%は、実行のまずさによる。知性やビジョンの欠如によるのではない」と述べているように、今こそ「戦略の実行力」が必要となれているのではないでしょうか。

ここで紹介する調査結果は、日本におけるビジネス・パーソンの「実行力」の平均値ということができます。この調査結果をご覧いただければ、日本企業における「実行力」は、待ったなしの課題であるとお感じになるでしょう。

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