働き方改革の一環として政府が「原則、副業・兼業を認める方向で普及促進を図る」と旗を振る中、2018年は副業元年と呼ばれています。
大手企業をはじめ続々と副業容認が広がってきています。
「副業」といっても、単に早朝や業務後に別の仕事をする働き方だけではなく、自分の好きなことをしながら世の中に貢献していくという働き方が増えています。
これからの時代は家と職場以外にサードプレイスを持ち、会社の仕事だけでは得られない学びや人間関係を構築することで、新しい働き方や自己実現のための活動が拡がってきています。
今回、大手通信企業で働きながら、週末は国立大学ボート部の強豪校でマネージャーコーチをされている山本圭佑さん(31歳)にインタビューをしました。
山本さんはフランクリン・コヴィー・ジャパンが開催する「7つの習慣®️SIGNATURE EDITION4.0」や「7つの習慣®️マネージャー」を受講され、学びが日々の生活にとても役に立っていると話してくれました。
山本さんが現在、会社外で取り組んでいること、7つの習慣との出会いとその後意識していること、そしてこれからのビジョンについてお話ししていただきました。
マネージャーコーチに取り組み始めたきっかけと仕事内容は?
元々私も大学時代にボート部に所属し、マネージャーをしていました。大学卒業後、一旦ボートからは離れ、通信企業に就職しました。
当大学ボート部の選手は70人、マネージャーは30人いるのですが、3年前に監督が変わり、部員にヒアリングを行ったところ、選手には漕ぎ方などを指導してくれるコーチがいるのに、マネージャーはやりたいことがあっても、その取り組み方について相談できる相手がいないという課題を持っていることを知り、マネージャーコーチというポジションを作ったのです。新監督は私の2つ上の先輩だったこともあり、初代マネージャーコーチの打診をいただきました。
ボート部のマネージャーの活動内容は多岐にわたり、食事管理、会計管理、新人管理、広報等があります。私は学生時代、それらすべてを統括するマネージャーとして活動していました。選手、マネージャーは寮生活なので、マネージャーにとって100人分の食事を毎日作るということも大きな仕事の一つです。ただ食事を作るだけでなく、選手の栄養面を考え、サプリメントの取り方をアドバイスします。
人数が多いだけに学生の活動としては会計の規模も大きく、数千万円の管理が必要となります。資金はOBと、部員から集めていて、ボートの購入費、部員の食費、ウェイトトレーニング用の機材、洗濯機や乾燥機に使われます。
今意識して取り組んでいることはなんですか?
今意識している点は2つあります。
1つ目は、部員が新しいことにチャレンジできる環境を整えることです。
大学のボート部は130年を超える長い歴史があり、積み上げられた結果を出すためのメソッドがあるのですが、
一方で部員はそのルーチンワークに追われてしまう傾向があります。新しいことへの取り組みは「まずは指導陣から」というキャッチフレーズを共通認識として指導陣の間ではいつも大事にしています。
例えば毎日練習の繰り返しで疲労が溜まっていたり、モチベーションが下がっている際には、「リフレッシュする機会だって、自分たちで作りだしていいんだ」という観点から、指導陣で流しそうめんをやろうという案を出しました。そうした姿勢を見せるのは大事かなと思います。
選手のメンタル管理にはOne Tap SportsというITツールを使用したり、コミュニケーションをとったり、タイムの下がり方を確認することで気づくようにしています。
2つ目は、選手の強みと弱みを明確にして、そこに戦略的に集中して練習をすることです。
高校にもボート部は多数あり、そこで注目される強い選手は私立大学が獲得していくため必然的に強い選手ばかりが集まります。一方で、我々は国立大学なので、選手のほとんどが0からのスタートで、4年間で日本一を目指していく集団です。普通に練習しているだけでは私立大学を追い越せないので、成長することは当たり前で、その角度をどれだけ上げられるかが勝負だと思っています。戦略的な練習を積み重ねた結果、昨年の全国大会では準優勝という結果を収めることができました。
「7つの習慣」との出会いと、習慣を実践して変わった点を教えてください。
初めて知ったのは2〜3年前です。同じ部署の先輩が「7つの習慣」のセミナーを受講し、フランクリン・プランナーの手帳も使用しており、会社で何か研修を受けなくてはいけなかった時にそのセミナーをお薦めしてくれたのがきっかけです。それまでは本屋で表紙を見たことはあったけど、分厚い本だったからなかなか手を出せなかったですね(笑)。
最初の印象は宗教的な思想か方法論の話かだと思っていたのですが、実際に受講してみると、モヤモヤしていた点が腑に落ちてスッキリした感じがありました。
「影響の輪」の話に関しては、会社やボート部のコーチをしていて悶々とすることも、「関心の輪」ではなく、「影響の輪」に集中しようと思えるようになりました。主体的でいようと自分に言い聞かせたり、対人関係で困っているときにWin-Winを意識して第三の案を生み出そうなど、今自分が困っていることや解決が必要なことに対して、どんな風にアプローチすればいいのか、どんなスタンスでいるべきなのかが明確になりました。
「7つの習慣」で言われていることは当たり前のことがほとんどなのですが、しっかりしたフレームを与えてもらったことでイライラしなくなったり、悶々としなくなりました。
「7つの習慣」は汎用性が高く、どんな場面にも当てはめられ、フレームワークがしっかりしているので、日々の仕事や人間関係にも役立つなと感じました。
マネージャーコーチという立場になり、久しぶりに人に何かを教える立場になった時に、この習慣や考え方は拠り所にしやすいと思いました。
マネージャーの仕事は答えが一つではないことが多くて、そんな中で学生が成果につながることを信じて行動していくことに関して、難しい世の中の構図をどう捉えたらいいのか、人間関係でどうしたらいいのかを考えていくことに関してとても役に立つ気がしました。
山本さんのビジョンを教えてください
私は人を支える仕事が好きです。仕事でも、自分の身近な人や、間接的に関わる人も含めてみんなが安心して日々の生活を送れたり、前に進んでいくチャレンジをしていける土台を作っていきたいと思っています。自分がスタープレイヤーになるのではなく、スタープレイヤーが活躍できる土台をしっかり整えていきたいと思っています。
例えば、部を続けるって結構大変なのです。現状維持は退化であって、廃部になっていく部もたくさんあります。だから強くあり続けなくてはいけない。今年の優勝を実現できるのは選手だけど、10年間勝ち続けられる組織を作れるのはマネージャーだけだと思っています。
今の目標は、選手だけではなくマネージャーも注目されるような、日本一のマネージャー組織にすることです。お金や危険の管理は私が責任を取っても良いと思っていますし、先駆的な取り組みや積み上げをやりながら、失敗してもいいので、とにかく新しいことにチャレンジしてほしいと思っています。
新しいチャレンジの例の一つとして、昨年ビール作りに取り組みました(笑)
ライバル校との対校戦があり、その年で10連覇目だったので、その記念にビールを作りたいという案が出ました。とあるブルワリーにお願いしてみたら、“自社のプロジェクトコンセプトにマッチするのでぜひ一緒にやろうよ”と、快く引き受けてくれました。しかもラベルを作るだけじゃなくオーセンティックで、ボートの本場イギリスで流行るようなエールビールを特別に作ってくれました。OBや親御さんやファンの方々に周知したら飛ぶように売れました。
体育会とビールの組み合わせって、今までにない、全く新しい組み合わせだったと思います。そんな風に誰もやったことのないことを自由に発想できる土台を今は作っていきたいと思っています。
終わりに
大手通信会社に勤めながら週末は国立大学ボート部の強豪校でマネージャーコーチをしながら、チームメンバーの育成に貢献している山本さん。チーム規模は100人という、中堅企業と同じくらいの組織でリーダーシップを発揮し、新しいものを生み出す土壌を作るという経験は、会社の業務では得られないものに違いありません。
会社以外の時間を社会に貢献するために使いながら、問題解決能力を高め、サードプレイスで人間関係を構築し、自身の価値を高めることは本業の仕事にもメリットになります。
そして自分の行動や人との関係に困難が生じた場合、7つの習慣のフレームを意識し実践できることは、前に進むことのできる要素の一つになるのかもしれません。