近年、組織における女性リーダーが注目を集めています。しかし、日本は世界と比較すると、女性の重要ポストへの登用はまだ多くありません。
そこで本記事では、日本でなぜ女性リーダーが少ないのか、海外との違いを交えて解説します。
女性リーダーの強みや特徴、育成・登用のメリットなどもあわせて紹介します。ぜひ参考にしてください。
女性リーダーの現状
海外と日本における女性リーダーには、どのような現状があるのでしょうか。それぞれの実情を解説します。
海外では女性リーダーが多い
世界の主要国における女性管理職の比率は、30%〜40%が一般的です。海外では多様性が認められている点に加え、実力主義で人事を決める傾向が強く、組織での女性リーダーの登用も多い傾向にあります。
男女問わず、能力のある人に重要ポストが与えられるため、有能な人材なら女性であっても登用されることが普通です。
家庭と仕事との両立や、出産・育児でブランクができた場合でも、海外なら自身のキャリアを諦めることなく第一線で活躍し続けられます。
日本では女性リーダーが少ない
厚生労働省「雇用均等基本調査」によると、日本の管理職に占める女性の割合は、平成21年度の段階で10.2%、令和元年の段階で11.9%、でした。
この数値からわかるとおり、海外と比較して日本では、組織における女性リーダーの割合が圧倒的に少ない点が特徴的です。
日本政府は、女性管理職比率30%という目標を掲げていますが、直近10年でわずか1.7%しか女性管理職の割合は伸びていません。
したがって、日本政府が掲げる目標に達成するには、まだ時間がかかると予想されます。
働き方改革の推進によって、以前と比べると女性管理職の登用は増えつつありますが、日本の管理職の登用は世界と比べると圧倒的に不足しています。
日本で女性リーダーが少ない理由
なぜ日本では女性リーダーが、これほどまで少ないのでしょうか。主な理由を3つ解説します。
根強く残る年功序列
日本は年功序列が根強く残っているため、勤続年数を元に人員配置が行われるケースが一般的です。
しかし、女性は出産や育児などのライフイベントの発生により、継続したキャリア形成が難しい傾向にあります。
また「女性だから」という合理性のない理由で、活躍の機会や可能性が、男性と同じように与えられないこともあります。
日本で根強く残る年功序列は、結果として、日本で女性リーダーがなかなか増えない要因となっています。
ワークライフバランスの難しさ
日本では、いまだに「育児や家事は女性の役割だ」とする旧来的な考え方が見受けられます。
そのため、一度仕事を辞めれば復帰後であっても昇進は困難になる可能性もあり、家事や育児で忙しければ事業のリーダーを務めるのはさらに難しくなるでしょう。
女性社員の中には、仕事と家庭を両立するためにあえてリーダー職への昇進を希望しないケースも少なくありません。リーダー職になれば、ワークライフバランスをとることがさらに困難になると考えている女性が多いからです。
ロールモデルの不足
日本では女性リーダーが少ないため、これから女性リーダーとして活躍したい人たちにとってのロールモデル(お手本)もあまりいません。
職場で身近に活躍する女性リーダーがいなければ、たとえ能力のある女性でも、キャリアの継続的な確立や、自分がリーダーとなる将来像を描きにくいでしょう。
ロールモデルが不足していることで、女性自身にも女性はリーダーになりにくいという先入観や思い込みがあることも否定できません。
女性リーダーの強みとは?
女性リーダーには、どのような特徴があるのでしょうか。女性リーダーの代表的な強みに焦点を当て、解説します。
変革型リーダシップ
リーダーシップは、主に「交換型」と「変革型」の2種類に大別できます。
交換型とは、報酬と服従を交換する形の強靭なリーダーシップです。この型は、特に男性リーダーに多い種類のリーダーシップといわれます。
一方変革型は、一人ひとりの意欲を高めて内面の変革を促し、個人の能力開発から全体の利益につなげるリーダーシップのことで、女性リーダーに多いのが特徴です。
変革型リーダーシップを発揮するためには、リーダーの信頼やモチベーション、傾聴力、コーチング力などが求められます。
これらの能力の根底には、優しさや周囲への気遣いなどが必要なため、女性固有の強みを発揮しやすい点が特徴です。
組織の成長だけを追い求めるのではなく、個々人の幸福も尊重される時代においては、変革型リーダーシップのある人材の必要性が増しています。
高いコミュニケーションスキル
仕事では、取引先や顧客、同僚などとの、円滑なコミュニケーションが求められます。
また相手の言いたいことを正確に把握し、やり取りを進めていく力も必要です。
一般的に、女性は男性よりもコミュニケーションが得意だといわれています。
女性は男性よりも多くの言葉を同時に深く処理する能力や、相手との共感を重視しながらコミュニケーションを取る力に長けているためです。
したがって女性がリーダーになれば、高いスキルを発揮しながら組織のイニシアティブをとれる可能性が高くなります。
女性リーダーを登用するメリット
女性リーダーを登用すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。代表的な3つのメリットを解説します。
企業のイメージ向上
女性リーダーを多く登用すれば、女性の活躍に力を入れる企業として、社会的なイメージが向上します。
近年は、性別に関係なく重要なポストにつきながら、組織のイニシアティブをとれる多様性が重んじられる風潮にあるためです。
例えば、女性を管理職や組織のリーダーなど、中心ポストにおくことで、性別で能力を判断しないホワイト企業だと、外部にアピールできます。
さらに、先進的かつ洗練した社風を求職者に示せれば、求人で競合他社よりも有利に優秀な人材を集めることが可能になるでしょう。
組織内での意識改革
女性リーダーが職場にいると、他の女性従業員もキャリアプランが立てやすくなる点がメリットです。
特にキャリアプランへの意識が高い女性は、先輩の女性従業員をロールモデルとして、自身のキャリア像の目標にできます。
今までは性別的な役割や自身の固定観念を理由に、継続的なキャリア形成を諦めていた女性も、仕事への意欲が高まるきっかけとなり、結果として企業の生産性を上げることが可能です。
女性従業員のモチベーションがアップすれば、男性従業員にもよい刺激となって、組織全体の意識改革につながります。
従業員満足度アップ
女性躍進法に基づく評価項目をクリアした企業は、厚生労働省から「えるぼし認定マーク」が付与されます。
この認定マークを受けるための外部評価では、男女どちらの従業員にとっても働きやすい職場環境を作るための項目が設定されています。
例えば、採用における男女の競争倍率や、管理職の女性比率などの要件を満たすことが、認定マークを得るうえで必要です。
女性従業員が働きやすくなる職場環境を醸成することは、従業員全体が快適に仕事をできるきっかけにできます。
女性リーダーを育成するポイント
女性リーダーを育成する際に、企業側はどのような点に注意すべきなのでしょうか。女性リーダー育成のポイントを解説します。
女性がキャリア形成しやすい環境づくり
女性リーダーを増やすためには、まず女性が働きやすい環境を作ることが必要です。
例えば、フレックスタイムや時短勤務、在宅勤務など、働き方に多様性があり、個人の事情に合ったワークスタイルを選べると、イレギュラーな勤務体制でも問題なく働き続けられます。
さらに、産休や育休をとりやすい制度や雰囲気作りや、育児中の従業員が、早退や有給取得をしやすい体制の整備も、キャリア形成しやすい環境づくりでは、重要な要素です。
女性リーダーのコミュニケーション活性化
女性リーダーや女性従業員が、職場内でコミュニケーションを取りやすくできるよう、相談や報告しやすい環境を整えることが大切です。
日本の職場では女性リーダーがまだ少ないため、組織内で孤立しやすい傾向にあります。
例えば、女性リーダーや女性従業員同士のコミュニティを結成すると、社内外での人脈形成の手助けとなります。
コミュニケーションが密になれば、女性が働くうえでの不安が軽減され、意欲的に仕事に取り組めるでしょう。
女性リーダー育成研修の活用
日本政府は、女性役員候補に向けた育成プログラムとして、「女性役員育成研修」を策定しています。
この研修では、企業経営層による講演や法律、アクションプランの作成、グループワーク、交流会などが実施され、女性リーダーに必要な素養を習得可能です。
また、女性役員として必要な高い意識、広範かつ深い知識を習得しながら、女性リーダー同士のネットワークも構築できます。
女性リーダーの育成を目指す場合は、企業側でも積極的に、このようなプログラムの活用をおすすめします。
長期的に取り組む
女性リーダーの育成には時間がかかるため、長期的な視点で人材の育成に取り組むことが必要です。
特に組織内で女性リーダー育成の前例がない場合、育成体制や配置転換などについて見直しが必要になるケースもあります。
女性リーダーのロールモデルがないと、リーダーとしての必要な知識や経験を蓄積できず、成果が出るまで時間がかかります。
したがって、短期的な成果を求めず、長い目で取り組むことが、女性リーダー育成を成功させる秘訣です。
女性リーダーとしての資質を見極める
女性の誰もがリーダーに向いているわけではなく、男性と同様に女性にも得意不得意があります。
リーダーとして必要な資質は、リーダーシップをはじめ、セルフマネジメント能力やコミュニケーション能力、チームワーク能力などです。
これらの資質を兼ね備えているか、しっかりと見極めることが大切です。
また、たとえリーダーとしての資質があったとしても、本人がリーダーになることを希望しない場合、リーダーへの任命の強要は難しいでしょう。
まとめ
組織における女性リーダーの強みは、一人一人の意欲を高めて内面の変革を促し、個人の能力開発から全体の利益につなげられる点です。
また、豊かな会話力で、広く深いコミュニケーションができる点も、女性リーダーの強みといえます。
ほかにも、ビジネスにおいて重要な事柄は数多くあります。最高の業績を上げている組織は、常に以下の4つのことを適切に実施しています。
・各階層で優れたリーダーを育成する
・個々人に効果的な習慣を形成する
・包括的で信頼性の高い文化を構築する
・共通の実行システムにより最重要目標を追求する
フランクリン・コヴィーはこの4つの重要領域における組織の行動変容の実現を通して
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